第四章
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「やっさんは一人じゃなかったんだよ」
「西川きよしさんもいてか」
「それで漫才師だった」
「そうだっていうんだな」
「わしのやっさんの物真似はやっさんが一人の時の物真似なんだよ」
相方がいる漫才の真似はやはり相方がいてこそだ、そうでなくては真似をしてもどうにも空虚なものになる。
「だからな」
「それでか」
「やっさんの物真似してもか」
「限度がある」
「そう言うんだな」
「そう思えてきたんだよ、わし他の人の物真似もしてるけれどな」
そちらの芸の話もするのだった。
「それでも思うんだよ」
「やっさんは二人でこそやっさんだった」
「きよしさんもいてか」
「ああ、あの人が本当に面白かった理由はな」
彼の漫才を何年も研究してきたからこそ言える言葉だ、わかったからこそ。
「二人だったからなんだよ」
「西川きよしさんがいて」
「それでか」
「それで本当に面白かったんだよ、だからやっさんだけの物真似をしてもな」
それは、というのだ。
「物真似自体も芸にしても」
「やっさんのそれは限度がある」
「あの人の場合はか」
「それがな」
わかってきたとだ、考える顔になって言ったのだった。
「そうなってきたよ」
「そうか、あの人だけの真似をしても」
「限度があるのか」
「そう思えてきたよ、これからもやっさんの真似は続けるけれどな」
それでもだというのだ。
「その辺りも頭に入れてくか」
「きよっさんのことも」
西川きよしの通称である、横山やすしがやっさんであることと同じくこのもう一人の天才漫才師にも通称があるのだ。
「頭に入れてか」
「とはいっても僕はな」
「きよっさんの物真似は」
「出来ても」
それでもだというのだ。
「この顔だから」
「ああ、どんどんやっさんに似てきてるな御前」
「日に日に」
「マジでやっさんのクローンじゃないのか?」
「それとも生まれ変わりか?」
「実際に生まれ変わりにもね」
思える時もあるとだ、佳史は言った。
「自分でもね」
「そうだよな、そこまでやっさんに似てたらな」
「ちょっとな、きよっさんの物真似はな」
「ちょっとな」
「ちょっとないだろ」
「やっさんがきよっさんの物真似する様なものだぜ」
「そうなるからな」
だからだというのだ。
「ちょっとそれはな」
「容姿的な問題でな」
「ちょっとな」
「止めた方がいいな、メインでやるには」
「そっくり過ぎだよ」
「むしろ」
ここでだ、こうも言った佳史だった。
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