第三章
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「地獄だからな」
「ギャラは物凄く安くて」
「扱いはゴミだ」
競争の激しい芸能界の中でもというのだ。
「それこそ百円ライターみたいに扱われる」
「使い捨てですか」
「ああ、はっきり言ってな」
「お笑い芸人はその扱いなんですね」
「アイドルとかよりずっと酷い」
実際にそうである、アイドルは何だかんだ言って大切に扱われる。しかしこれがお笑い芸人となるとその扱いはなのだ。
「それはわかってるよな」
「はい、そのうえで」
佳史は悠一にこのことは確かな顔で答えた。
「目指してます」
「いい心がけだな、やっぱりお笑いはな」
「笑ってもらってなんぼで」
「売れないと生きていけない」
「それで、なんです。わしも」
高校時代も横山やすしの一人称である、もっと言えば高校に入り髪型も角刈りにして余計に横山やすしに似ている。その目も。
「お笑い芸人になったら」
「売れっ子になるんだな」
「絶対になります」
「その意気だ」
悠一は笑って佳史のその背中を自分の手で押した、そのうえでこうも言った。
「部活も頑張れよ」
「そうさせてもらいます」
佳史も笑顔で応えた、彼は一年の時からお笑いの勉強に励み一年生の中では有望株になった。その横山やすしの物真似はかなり堂に入っていた。
しかしだ、一年の終わりになってだった。
急にだ、彼は難しい顔になって一年生の部活仲間にこう言った。
「何かわし最近な」
「やっさんの物真似またよくなったな」
「どんどん似てきているな」
「いや、何かマンネリになってきてるんじゃないか?」
自分のその物真似について言うのだった。
「飽きてきていないか?」
「そうか?別にな」
「僕達はそうは思わないけれどな」
「それは気のせいだろ」
「特に何もないけれどな」
友人達は彼の言葉にこう返した。
「別にな」
「物真似はさらによくなってるし」
「それを見たらな」
「マンネリどころかな」
「さらに面白くなってきてるよ」
「やっさんそのものになってきてるぜ」
これが仲間の言葉だった、だが、
その彼等の言葉を聞いてだ、佳史はふと言った。
「横山やすしって独特だったな」
「ああ、やすきよの漫才はもう天才だったよ」
「あんな面白い漫才もうないぜ」
「色々と問題のある人だったけれどあの兼ね合いは凄かったよ」
「まさに二人揃うと完璧でな」
「あんな漫才師もう出ないな」
「二人、だよな」
佳史は仲間の一人のその言葉に対して返した。
「やっさんは一人じゃなかったよな」
「ああ、西川きよしさんがいたからな」
「あの人がいてな」
「それでやすきよとしてな」
この二人でだったのだ、横山やすしは。
「売れてたよな、けれどわしは一人でやってる」
「やっさんの物
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