第十話:闇夜切り裂く光の剣閃
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かのように、ユメは目を細めた。
「…レンを馬鹿にしてる訳じゃないよ? ただ、強いなぁって思っただけ」
「……オレは強くなんかない。ずっと、後悔しっぱなしだ」
本当に強いのなら、オレはきっと神の盾の仲間達にこれほど囚われる事はなかっただろう。
そうだ、オレは強くなんかない。殺した仲間達の分まで生きるとか息巻いておいて、結局は罪の意識から逃れようとしているだけなのだから。
「それでも、レンは前に進み続けてる。私には、そんな風に生きるのは難しいな」
それでも、オレのコートの裾を握り締めて震えているユメを見たら、強く在らねばならないと思った。少しでも彼女の心の支えなれるように、また、強がってみようか。
「……なあ、ユメ。話したくないなら、何も言わなくていい。怖いのなら、立ち上がらなくてもいい。でももし、前に進みたいと少しでも思うのなら、オレに、話して欲しい」
ユメが抱える闇。それを感じ取れない程、鈍い訳ではない。それに、例え彼女が話してくれたとして、オレが力になってやれる可能性は高くない。
それでも、ここで見て見ぬふりなんて出来ない。少しでも力になってあげたくて。少しでも、その苦しみを一緒に背負ってあげたくて。
「…ふふ、レンって変わらないね」
「……変わったと言われたり変わらないと言われたり…周りはオレをどんな奴だと思っているんだ」
無理に笑う彼女を見ていられない。全く、なぜこんな思いをしながらまだ笑えるのか。それすらも過去と関係があるのか。
「……私ね、小さい頃にお父さんに捨てられたんだ」
「ーーーっ」
唐突に告げられた言葉に、思わず息を呑む。
なるほど、親に捨てられたというなら、それがトラウマになってもおかしくはない。
「お母さんは体が弱くて、私を産んだ後にすぐに死んじゃってね……お父さんもがんばって私を育ててくれたんだけど……。
理由は分からないんだけど、ある夜に、お父さんは私を置いて家を出て、その後二度と戻って来なかった」
震えているユメの手を包み込むように握る。
彼女は今、自分の抱えるトラウマと懸命に戦っている。思い出すだけでも辛い記憶に、真正面から立ち向かっているのだ。
「明かりもついてない暗い部屋。開かれた玄関から差し込む月の光。それに照らされた父さんの背中を、まだ鮮明に覚えてる。『ごめんな』って言って、私から離れていく背中を覚えてる」
それが、ユメのトラウマの正体。まだ幼い頃に刻まれたその景色が、彼女の心を縛り付けているのだ。
納得するのと同時に、これはオレが踏み込めない問題であると自覚した。
手を差し伸べる事はできる。励ます事も、時間を掛ければ忘れさせてやることもできるかもしれない。
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