第十話:闇夜切り裂く光の剣閃
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「くっ…」
意識が霞む。少しでも気を緩めれば途切れてしまいそうになるのをなんとか堪えて、痛みの波が引くのを待ち続けて数十分。
ようやく視界に走るノイズが止んできた所で、オレはふと今まで自分のコートの裾を掴んでいたユメがいない事に気づく。
ふらつく足を叱咤して立ち上がり、暗い部屋を見渡してみる。
元々そう大きくない部屋だ。ユメの姿はすぐに見つかった。
「ユメ」
声を掛けると、体育座りで膝に顔を埋めていたユメの体がピクリと動いた。
震えている。誰が見ても分かる挙動に、オレは眉を顰めた。ここまで来ると、単に暗闇が怖いのでは話が終わらないのだと簡単に理解できた。
しかし、それを本人に無理矢理話させるのも気が引ける。仕方なしに、ユメの隣に腰を下ろす。
幸いな事に、このゲームのクエストに制限時間は存在していない。いくら時間を掛けようが自由。なら、彼女が心の整理をつけるまで休んでもいいはずだ。
どれ位そうしていたのだろうか。ソード・ダンサーの冷却時間が終了したのを確認していたところに、隣からか細い声がかかった。
「……レン、ごめんね」
オレがユメを庇ってダメージを受けたことを気にしているのだろうか。震える声で紡がれた謝罪に、オレは本心を口にした。
「気にするな。二人とも死んでいないのだから問題ない」
あれ程の猛攻を受けても、オレかユメが死ぬことはなかった。間違いなく、あの場面では最良の結果であったと言える。
「でも、私はレンに迷惑を……」
「気にしていないと言っているだろう? そもそも精神的に不安定なお前をここまで引っ張ってきたのはオレだ。最後まで体張って守ってみせるさ」
そうだ、彼女を引っ張ってきたのはオレだ。本当ならばこの塔に入る前に引き返す事もできた。しかしそれをしなかったのはオレの判断であり、オレの過失だ。ユメが気にする事ではない。
「………」
「………」
それきり、再び沈黙が流れる。
さてどうしたものか。ユメがこの状態のままだとしたら、ここは素直にクエストを諦めて一度街に戻った方がいいだろう。
幸いここは圏内の扱いとなっているし、このままリターンクリスタルを使えば戦闘に陥ること無く戻ることができる。
どちらかが死ぬ事はあってはならない。オレ個人の私情を抜きにしても、ユメを攻略組から失うのは大きな損害だ。故に、無理をする理由はどこにもない。
街に戻ろう、と口を開きかけたところで、ユメの手が、再びオレのコートの裾を掴んだ。
「……レンは、怖いものってなさそうだよね」
「…どういう意味だ?」
ユメの真意を測りかねて、首を傾げることしかできない。そんなオレの様子に、まるで眩しいものを見る
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