第一章
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もう年下でも
スー=ヴァンダムはブリュッセルのパン屋の娘だ、癖のある黒く長い髪を腰のところまで伸ばしていて大きな青い目を持っている。
二十五歳だがまだ幼さの残るあどけない感じの顔立ちであり鼻は普通位の高さで丸みがある。背は一六〇を少し超えた位でスタイルはいつも露出の少ない服装だが整っている。そのスーはいつも店の常連客や家族に言っていた。
「もう私も二十五だし」
「それで、っていうんだね」
「スーちゃんも」
「そう、家の子供は私一人だから」
余計に、というのだ。
「結婚してね」
「それでお嫁さんになる」
「そうなりたいんだね」
「それで二人でお店をやっていくの」
このパン屋をというのだ。
「そうなりたいから」
「だからだよな」
「お婿さんが欲しい」
「そういうことだね」
「そう、ただ相手はね」
その人はというと。
「まずパンを焼けないと」
「スーちゃんパン焼き上手だけれどね」
「そっちもね」
このことは生まれてからずっとだから当然と言えば当然だ、スーはパンを焼くことにかけてはまさにプロだ。
それでだ、その相手にもこのことを求めるのだ。
「少なくともパンを焼けることが好き」
「そのことが条件だね」
「スーちゃんの旦那さんの」
「そう、やる気さえあれば」
これを第一として言うのだった。
「後は私が色々教えてあげるし
「やる気があれば腕は上達する」
「そういうことだね」
「何時かはね」
絶対に、というのだ。
「誰だって最初は下手よ」
「パンを焼くことも」
「そのことも」
「そう、だからよ」
それ故にというのである。スーは結婚相手にまずはパンを焼くことが好きであることを求めていた。そしてその求めることはこれだけではなかった。
いつもだ、常連や客にこうも言っていた。
「それにね」
「格好いい人だね」
「背が高くて」
「私はね、あまりね」
ベルギー人にしてはというのだ。
「背が高くないから」
「相手は背の高い人がいい」
「そうだよね」
「そう、背が高くて格好いい人。とはいっても」
ここでいつもこうも言うのだった。
「まあ容姿は二の次で」
「やる気の次は性格」
「それだよね」
「そう、性格がよくないと」
こう言うのだった。
「駄目よ」
「性格悪いと一緒にいたら嫌になるし」
「お客さんも嫌になるからね」
「それで誰も来なくなる」
「商売もあがったりだよ」
「そう、だからね」
それで、というのだ。
「性格がよくないと」
「まずはね」
「それがよくないとね」
「そう、だから性格よ」
顔よりもというのだ。
「そりゃ確かに顔がいいと目当てのお客さんも来てくれるけれど」
「それでも
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