狼
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せろ。誇り高い狼の戦士に見初められたこの子は、光の当たる世界に解き放つべきなのだから。
周波数140.85からCALL。
『サバタ、ご無事で何よりでした。まさか暗黒剣で狙撃を弾くとは……恐れ入りますわね。それにしてもあなたが敵対していた者を助けるとは、正直に申しますと私も驚きました。でも……そこにいたらきっと私も同じ事をしていたでしょうね』
「だろうな。しかし……次元世界は世紀末世界よりはるかに平和で危険が少ないはずなのに、彼女みたいな境遇の人間がどうして生まれてしまうのか、全く理解出来ん。世界が平和になればなるほど、人は他者を不幸にしてしまう性質を持っているのか……?」
『人間にそんな悲しい性質があるとは、私も思いたくありませんね……。その少女の詳細はこちらでも洗ってみます。サバタは別件で潜入していたリーゼ姉妹と合流して下さい』
「了解した。それと少し気になるのだが……ゲイザーといい、この子といい、武器は明らかに地球産の銃器だ。これって確か管理局では質量兵器と呼ばれて違法になるんじゃないか?」
『そうですよ。管理局は質量兵器の使用を禁止していますから、法に照らせばどちらも犯罪者として扱われますわ。しかしこの場合は、アレクトロ社にデバイスではなく質量兵器を与えられた、という扱いになるので責任はどちらかと言うとアレクトロ社に偏りますね』
「そうか……」
『その子が外に出た際、犯罪者として扱われる心配をなさったのですね。安心して下さい、サバタ。ゲイザーには弁明の余地はありませんが、その子は強制されていたという事実があるので、無罪を勝ち取る猶予は十分にありますわ』
「すまないな、エレン。そちら側は俺にはどうしようもないからな、後始末は任せるぞ」
『何を言ってるんですか。一番危険な橋を渡っているのはあなたなのですから、むしろ感謝するのは私達ですわ』
「フッ……久々に昔の感覚を思い出した。あの時のように、また3人揃えたらいいものだな……」
『ええ。いつかまた、ザジも含めた3人で語り合いたいものです。そのためにもSEED製造機の証拠写真を収めて、裁判に勝利しましょう』
「……ああ!」
通信切断。声援を受けて活力が復活した事を感じ、俺は少女と共に本棟の中央にあるエレベーターの下へと向かうのだった……。
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