狼
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に、俺はかつて記憶を失ったザジの姿を重ねてしまって、もう見捨てる選択肢は消え去っていた。
こんな時に……いや、むしろ丁度良く周波数140.48からCALLが入った。
〜♪
『お、繋がった! サバタ、本棟に無事たどり着いたみたいだね。良かった良かった』
『彼の事だもの、私達の想像もつかないような状況でもきっと生き延びるわよ。あんまり認めたくないけど、実力は相応に持っているもの』
「いいタイミングだ、リーゼロッテ、リーゼアリア。事情があって一度おまえ達と合流したい。今どこにいる?」
『えっと、ここは本棟地下2階の所長室だから、合流するならまず中央のエレベーターを使う必要があるわ』
『地下2階にいた敵は全て片付けてるから、そこからエレベーターに着けば合流まで楽なものよ』
「全て片付けたとは、随分大暴れしたな。潜入任務らしからぬ行動だ、魔導師にスパイは不向きな事がよくわかる……」
『まあ、こっちも色々思う所があってさ……それはともかく所長室は制圧したから、エレベーターを降りた所で合流するね』
『あなたの事だから心配は無用だと思うけど、周囲の注意はおろそかにしないようにね』
「わざわざ言われずともわかっている。それじゃあ後でな」
通信切断。またもリーゼ姉妹の後ろから流れていた歌の事は気になるが、それは置いておく。俺は少女の肩に手を置き、きょとんとする彼女に言い聞かせるように告げる。
「いいか? この先、おまえはもう戦うな。わかったか、どうしても戦うなら自分の意思で覚悟を決めてからにするんだ。それが出来なければ、どんな状況になろうとも二度と武器を持ってはならない。約束だ」
「……(コクリ)」
真摯な言葉で放った言葉に、彼女は真剣に頷いた。すると少女は徐に地面に転がった自分の狙撃銃PSG1を拾い、俺に手渡してきた。彼女の意図を知るためにひとまず受け取ると、彼女は俺の手の平にこう書いた。
『アズケル。ワタシガ、ミツケルマデ』
「そうか……それが良いな。わかった、この銃は俺が預かる。おまえが自分の意思で戦う覚悟を持った時、この銃は返そう」
「……(コクリ)」
銃弾も渡してきた少女は、銃を手放して身軽になった手で、今度は俺の手を掴んだ。それは武器や兵器しか握って来なかった彼女が、初めて人間らしく他人と手を繋いだ瞬間でもあった。ただ、彼女の手が俺に触れた瞬間どこかから女性の声が聞こえ、その声はこう言っていた。
『たとえ傍観者でも、女や子供が血を流すのは観たくない。利用されてばかりのこの子は、誰かを殺すための潜伏はしてない。誰かに助けてもらうために潜伏していたのだと……今はそう思いたい』
そうだな……俺もそう思う、スナイパー・ウルフ。だから……この子は俺に任
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