祭の賑わいと解ける緊張
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ら見える風景は、講堂全体を見渡せるほどであり、講堂にいる全ての視線はステージへと釘付けになっている。
理由は簡単。ステージには陽乃さんが指揮者として立ち、その指揮棒を振りかざすことで演奏が始まった。
「…へぇ」
「…流石だわ」
ステージに立った陽乃さんは、指揮者ながらにその存在感を溢れさせ、その腕の動きひとつひとつに神経が行き渡っていた。
「流石…ね。
意外と言えば意外だな。雪ノ下が人を誉めるなんてのは」
「そう?これでも私は姉さんを相等高く評価しているのよ。
私も………いずれああなりたいと思っていたから」
…そうか…。…そうだったのか。
今まで雪ノ下が追っていた背中はあの人の物で…比較される世間体や価値観に苛まれて、歪みながらも追い続けることを諦めずに完璧であろうとした。
だからこそなのだろうか?雪ノ下は―――
「ならなくて良いだろ。そんな物…」
「……え?」
「対抗心や憧れを持つことに遺憾を唱えるつもりはないが、そうしてしまった時点で勝負は既についてしまっている。
他人の価値観や比較に左右されて自分を作り上げるなんざ愚か者のすることだ。
その人物はその人物のやり方や理念がある。そうした物を見つける方が余程有意義だし、確実だろう」
「…負け……」
「誰かになろうとしている時点で、負けを認めているような物なのさ。例え自分がそう認めていなくても、卓越した考えを持つ人間ならば直ぐに気づく……比企谷とかな」
「………そうね。
………………私は負ける気はないわ。私は私のやり方で、私のあり方を見つける。姉さんなんて追加点でしかないもの」
こいつは……負けず嫌いと言うかなんと言うか…。
ん?
ふと、雪ノ下の後ろに一人の実行委員が表れ、耳打ちで連絡を伝えていた。
雪ノ下は目を見開き、驚愕を露にした。
「どうかしたのか?」
「…今すぐ舞台袖に向かいましょう。相模さんがいなくなったそうよ」
「…了解した。直ぐに向かう」
俺達は話しを打ちきって講堂の舞台袖へと向かった。
「遅れたか?」
講堂に到着し、すぐさま舞台袖へと向かった。
そこには平塚先生を始め、城廻先輩達文化祭実行委員が勢揃いしていた。
「問題ない。それよりも…」
「相模が居ないんだろう?とうとうやらかしやがったか」
予想はしていたのだが、やると思っていた分焦りは出てこない。
「携帯電話も繋がらなくて…」
「参ったわね…このままだとエンディングセレモニーが出来ない…」
「最悪代役を…」
「それは難しいと思います。最後の挨拶や総評は何とかなったとしても、優秀賞と地域賞の投票結果を知っているのは相模さんだけですから
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