暁 〜小説投稿サイト〜
FOOLのアルカニスト
英雄との鍛錬
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ら、全力を絞り尽くさねばならない。

 先程の隙が誘いであることには気づいていた。それでもあえてそれにのったのは、当然こちらにも狙いがあるからに他ならない。徹が今降魔しているのは、「<剣>LV35サカタノキントキ」だ。物理攻撃なら斬・打・投いずれの属性でも半減させるという戦闘相性を持ち、また耐久力にも優れたペルソナだ。つまり、先の一撃による被害は半減したものでしかなったわけである。

 されど、その尋常ならざる被害すら徹には想定済みである。即死さえ免れれば、事足りたからだ。突き刺さった蹴り足を肉体と右手で拘束し、左手で再び斬撃を見舞う。

 しかし、それをあっさりと防いでみせるのが英雄たる所以であろう。渾身の斬撃、しかも片足を掴まれているにもかかわらず、危うげなくあっさりと槍でで打ち払われる。いや、それどころかそのままの勢いで徹をも薙ぎ払わんとしている。

 防御が即攻撃へと転じる、あるいは繋がるのが達人の業である。そこに素人が付け入る隙などない。が、徹もまた尋常な少年ではない。薙ぎ払わんとする槍に反応し、瞬時に足を保持していた腕を放し、真っ向からその拳をぶつける。ぶつかる槍と拳、一瞬の均衡のうちに競り勝ったのは、意外にも拳の方であった。そして、それはそのまま、英雄を襲う凶手となる。

 これにさしもの李書文も驚いた。体勢が崩れていたとはいえ、神槍の異名をとる彼の薙ぎ払いは些かの衰えもなく、目の前の少年、現状の徹の技量・力ではどうあっても打ち勝つのは不可能であると理解していたからだ。だというのに、現実には徹の拳が己の槍に打ち勝ち、そのまま攻撃に転じているのだ。すなわち、ありえないことが起きたといっても過言ではないのだ。その驚きも当然のものと言えよう。

 だが、その驚きすら一瞬である。英雄である彼は、「こと戦闘において、ありえないことなどありえないのだ」ということを理解しているからだ。現実には、悪魔よりも強い人間だって存在するし、土壇場になって新たなる力に覚醒する漫画の主人公のような人間だっているのだ。大体、命が懸かった死合において、相手が想定以上の力量を発揮したり、限界を超えてくるなどよくあることである。ゆえにその驚きは致命的な隙とはなりえない。精々、数瞬挙動を遅らせただけに過ぎない。もっとも、徹にとっては十分すぎたのだが……。

 「破ーーー!」

 その数瞬の内に拳が開かれ、電撃を帯びた掌底へと変化する。渾身の踏み込みと気声と共になされたそれは、触れれば肉体を内部から破壊し内臓を爆砕して余りある威力を誇る。

 「かーーー喝!」

 それが自身の肉体に触れる瞬間、深い呼吸と共に特大の気勢を放つ李書文だが、掌底そのものは避けようとしない。狙い過たず炸裂する掌底。その体が轟音と共に吹き飛ばされる……が、それを成した徹
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ