英雄との鍛錬
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れない骨肉を潰し切り裂く感触が、相手の熱き血潮が、敵の断末魔等が視覚をはじめとした五感でもって、感じ取るのだ。それは否が応にも、人を傷つけること、ひいては殺すことを感じることであり、それに慣れさせるものだ。傷害・殺人への忌避感をなくしそれらを一手段として選択できるようになるまで、慣れさせることこそが、雷鋼の真の狙いである。
責任転嫁できる誰かの命令で人を殺すのではない。自身の意思でもって、自身の手で人を殺すのだ。それに慣れてしまったら、それは最早人といえるのであろうか。
つまるところ、散々悪魔を殺しておきながら、仲魔とはいえ同じ悪魔に名前を授け、自身の友とすると誓約し、それでいて、その後も悪魔を殺し時に悪魔合体を行える徹の精神はすでに化物といっても過言ではない。なぜなら、その行為は友としての価値を認め、一つの独立した存在として認識したものを殺すことであり、それは赤の他人を殺すことより重いものであることに他ならないのだから。
もっとも、今こうして知己の悪魔と平然と向かい合い、人間と同じ姿形をしたものと表情ひとつ変えずに殺し合いをできるのだから、今更なのかもしれないが。
「ちょっとは手加減とかしてくんない?」
徹はダメ元で言ってみるが、李書文の返答はにべもない。
「ほう、坊は未だ喋るだけの余裕があるか?ははははは!これは更なる功夫を積みたという意思表明よな」
突き出される槍のスピードが上がる。最早、どうあがいても常人にはかわせぬ領域にあるそれは、まさに神速。神槍の異名に何ら恥じるものではない一撃だ。
正確に喉を狙い穿つ神速の突き。されど、それを受ける少年もすでに人など超越した域にいる存在である。手にした刀ですんでのところで軌道を逸らし、避けてみせる。それどころか、避ける動きをそのままに反撃の斬撃へと繋げてみせる。
しかし、相手は英雄。しかも、得物は槍だ。少年の振るう刀とは間合いが違う。突きを受け流した隙を用いても、即座に間合いに入ることを許す程、英雄の槍の戻しの速度は遅くない。が、あえてそれを許したのだ。ゆえに、それは意図的に作られた隙、すなわち誘いに他ならない。
斬撃が切りさかんとしたところで、少年の刀は止まる。いや、止められたのだ。少年のみぞおちに突き刺さる英雄の蹴りによって。吹き飛ぶことを許さない、その場に崩れ落ちることのみを許す蹴撃。その威力たるや、少年のアバラを根こそぎ持っていき、その痛みたるや、体がバラバラになったと感じるほどのものだ。
それでも少年は倒れない。倒れるわけにはいかない。折角、英雄のさらなる実力を引き出せたのだ。どうあっても手加減されないのならば、少しでも己の血肉するべきだと考えているからだ。それに何より、彼の体はまだ動く。まだ死んでいないのだか
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