英雄との鍛錬
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人間とは何事にも『慣れる』生き物であると徹は思う。
―――初仕事の異界の主(LV20)討伐の報酬1000万円を皮切りに、この業界における報酬の桁違いなこと
―――それ以前に、雷鋼から課された死が日常茶飯事の鍛錬も
―――人とは思えない美しさを誇る女性型悪魔達(竜吉公主・チェフェイ等)の美貌にも
―――人を遥かに超えた力を持つ悪魔と戦い、それを殺すことにも
―――ペルソナという超常の異能の行使にも
―――そして、常人とはかけ離れた身体能力と強度を誇るようになった己の肉体さえも
そのいずれにおいても、繰り返す内に、或いはその時間が増える内に全て慣れてきたからだ。
しかし、そんな徹も、慣れたくて慣れたわけではない。生きる為に必要であったから慣れざるをえなかったというのが偽らざる彼の本音であった。
だから、今こうして新に課された鍛錬も慣れつつあるとはいえ、頼むから手加減して欲しいと徹が思ってしまうのは、仕方がないことであろう。たとえそれが、相手に全く伝わらないどころか、むしろ、攻め手が苛烈さを増すばかりという、真逆の結果が待っていたとしても……。
初仕事を終え、戻った徹を待ち構えていたのは、雷鋼の仲魔である『<英雄>李書文(LV68)』であった。李書文、『神槍』の異名を持ち、『二の打ち要らず、一つあれば事足りる』と謳われた中華が誇る武極の英雄。雷鋼が彼を仲魔にしているのは全くの偶然だ。ヴィクトルの実験に付き合って、手に入れた曰く付の槍を合体に用いたところ、予想外にできてしまった仲魔だそうだ。雷鋼の仲魔で唯一、LVが70以上でないことから見ても、意図したものではないことは明らかであった。
とはいえ、その実力はけして侮れるものではない。流石は中華が誇る大英雄の一人、その能力は雷鋼の他の仲魔と比べて、なんら遜色なかったのである。それどころか、武技と言う面で言えば、彼は間違いなく最強であり、また、雷鋼とも馬が合い、その信頼の厚い仲魔であった。徹自身、脱走を彼によって阻止されたことは、一度や二度ではないし、その槍、あるいは拳打で殺されたことすらある。反面、平時では何かと面倒見のいい男であり、彼からのアドバイスはいずれも非常に役立つものであったから、徹は複雑な想いを抱いていた。
そんな相手が徹が自活するようになって、新に課された鍛錬の担当者であった。その苛烈さは、ある意味雷鋼以上であった。年を経るごとに減少していた死の回数が、ここ半年増加の一途を辿っていることからも、それは理解できるだろう。
白打は『二の打ち要らず、一つあれば事足りる』を体現し、どういう原理かは不明だがとにかく当たれば即死。かと言って、神槍と謳われた槍技もけして劣るものではなく、気づけば串刺しにされていたことなどざらであった。
慣れる
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