第三章
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「いいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
「そうさせてもらいます」
「是非共」
人間の家族も応えてだ、プロメテウスが教えた通りにだった。
その火を使った、その見事な使い方を見てだ。
ゼウスもだ、深く考える顔でプロメテウスに言った。
「確かにな」
「私の言う通りにですね」
「人間達は火を正しく使っている」
「その通りですね」
「しかもだ」
ここでこうも言ったゼウスだった。
「我等神への捧げものにもだ」
「焼いた肉や火を使って料理をしたものもですね」
「多くある、特にだ」
ゼウスはその手に小麦を練って焼いたものを出した。それを自ら口の中に入れて食べつつプロメテウスに対して言った。
「これだが」
「パンですね」
「我等は既に口にしているが」
「人間達はそれも作ってです」
「我等に捧げている」
「どう思われるでしょうか」
「これはそのパンの一つだ」
人間達がゼウスに捧げたそれだというのだ。
「それだが」
「お味は」
「美味だ」
実際にかなり美味そうに食べるゼウスだった。
「これだけの味とはな」
「満足して頂けていますね」
「若し人間が火を使わなければ」
その時はだった、まさに。
「今こうしてこれを食べられなかった」
「その通りですね」
「全ては人が火を知ったからか」
「そして他にもです」
「様々なものを造ってだな」
「我々に捧げものをし」
そして、というのだ。
「その文明、文化を進ませています」
「ヘルメスやアポロンも仕事がしやすくなったと言っている」
そうした分野を司る彼等もというのだ。
「有り難いとな」
「では」
「いいだろう」
ゼウスはプロメテウスに己の判断を告げた。
「そなたの言う通りにしよう」
「有り難きお言葉」
「しかしだ」
ここでだ、ゼウスは。
深く考える顔でだ、こう言ったのだった。
「そなたは最初からだな」
「最初からとは」
「人に火を与えたかったな」
プロメテウスにこう言ったのである。
「そうだな」
「はい」
プロメテウスは嘘を吐かなかった、ゼウスにありのまま答えた。
「実は」
「やはりそうか」
「はい、人もまた火を使いです」
「ああなることを考えてか」
「最初からそう思っていました」
「そうだな、そういえばだ」
さらに言うゼウスだった。
「そなたが火を与えた人間の家族だが」
「あの者達のことですか」
「デュカリオンとピュラの家族だったな」
人間の家族のそれぞれの名前も言うのだった。
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