三途にて待ちぼうけ
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辺りが真っ暗だ。何も見えねェ。
俺は確か……そう、死んだんだ。
敵の銃弾を受けて死んだ。どうせ助からないならと、病室から抜け出して総悟にトドメを刺して貰った。
総悟。悪ィな、あんなろくでもねェ世界に一人残してきちまって。
「……おい」
不意に後ろから声をかけられる。振り返ると見慣れた銀髪がいた。
「……万事屋」
「お前も死んだのか」
「くたばったのはテメーも同じだろーが」
「何だ、うずくまってるから落ち込んでんのかと思ったがそんだけ減らず口叩けりゃ大丈夫そうだな」
「誰が落ち込むか」
万事屋が隣に立つ。
「……行かねェの?」
「何処に」
「三途の川。この向こうにだよ」
ポケットから煙草を取り出してライターで火をつける。
「嗚呼。待つって約束しちまったからな。アイツが来るまではまだ行けねーよ」
「そうか。生まれ変わりなんてモンがあんのかは知らねェが一緒になれると良いな、大好きな沖田君と」
「なっ……お前知ってたのかよ!」
「そりゃ沖田君から相談受けてたし?」
「……あの馬鹿」
知らなかった。総悟が万事屋に俺の事で何か相談してたなんて。次会った時は総悟に聞いてみよう。
「じゃあ俺そろそろ行くわ」
「嗚呼。引き止めちまって悪かったな」
「素直に謝んな気持ち悪ィ」
「何だとコラ」
万事屋の胸倉を掴みそうになって、やめた。死んでまで喧嘩する理由もない。
「会えるといいな」
「会えるさ」
短い言葉を交わして万事屋は去っていく。
あれから元隊士や顔見知りが通過して行った。
総悟を待つ俺は三途で待ちぼうけ。暇を持て余して煙草を取り出すと最後の一本だった。
舌打ちして火をつけようとしたら、今度はライターがオイル切れ。
「クソッ……」
イライラしていると目の前に火がついたライターが差し出された。驚いて顔を上げるとそこには、
「本当に煙草好きですよね、土方さん」
俺が待ち焦がれていた男。込み上げてくる感情を抑えておとなしく火をつけられる。
「……遅ェんだよ」
「すいやせんねェ、無駄に生き長らえちまって」
言いながら優しい手付きで髪を梳かれその心地よさに目を閉じる。
「いや。それで良いんだ」
早死にされても困る、と。髪を梳いていた手が輪郭を確かめるように頬に添えられた。
「寂しかったでしょう」
「誰が」
「アンタが」
「……当たり前だろ」
煙草を離して口付ける。久しぶりに触れた唇は熱く、すぐに口付けは深くなる。
「ふっ……ぁ、はん……」
「土方さん……」
上顎をなぞられ、舌を絡め取られ吸われたり時折甘噛みされて全身の力が抜ける。貪るような口付けは呼吸が苦しくなるまで続いた。
「ハァ……長ェ、よ、馬鹿」
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