鴉
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“表”の人間がこれを知らないのは、“裏”がそれだけ強大かつ根強く蔓延っているからなのですわ』
「エレンやサルタナは、そういう連中と長年事を構えていたのか。おまえも大変だったのだな」
『“裏”との戦いは終わらない腹の探り合いみたいなものですからね。おかげでサバタに昔の私と同じ口調で会話しようとしても、腹を探られないように気を張る仕事時の癖で、どうしても丁寧語を常としてしまいましたわ。プライベートの時は元に戻るのですが……やはり聞き辛かったでしょう?』
「いや……おまえの処世術なのだから、それぐらい気にしなくても良いぞ」
『……ありがとうございます。それでは……潜入を再開して下さい』
『彼らの事は僕も気になるが……アレクトロ社の実状を暴けば、彼らも解放する事が出来る。サバタ、絶対に任務を成功させてくれ……!』
クロノの力のこもった声を最後に無線を切り、俺は安全地帯から移動を開始……重労働している連中は俺の姿が見えたら助けを懇願してくるだろうから、バレないためには彼らにも見つかってはいけない。証拠写真はカメラで撮っておくが、悪いが今は助けられないのだ。
中央まで来て巡回警備に当たる武装社員の隙をついてスイッチを押し、昇降機を呼ぶ。そしてサイレンと共に昇降機が降りてくると、迅速に乗り込んで上昇させる。
周波数140.85からCALLが入った。
『こうしてモニター越しにあなたの動きを久々に見ると、やっぱり任せて良かったと思いましたわ。並の人間や魔導師なら、昇降機に乗る前に見つかっていますもの』
「そうか。お眼鏡に適って光栄だな」
『サバタ……僕の気が済まないから、やっぱり伝えておこうと思う。そのスニーキング・スーツの事なんだが……』
「なんだ、クロノ?」
『実はな……』
「ああ」
『それ……………………………女性用なんだ』
「…………………何だと!?」
道理で胸の辺りがスカスカすると思った……というかそう言う問題ではない!!
「貴様、俺になんてものを着せるんだ! ふざけるな!!」
『しょ、しょうがなかったんだ! マリエル・アテンザは女性だから、作った物も女性用だったのは自然の流れだし、そもそも時間が無かったから最初にあった作り置きを要望通りに仕立てるだけで精一杯だったんだ!』
「だからっておまえ……! くそっ、あまりに屈辱的な気分だ……!」
『まあまあ、サバタ。大人が着ていれば確かにアレでしょうけど、まだあなたは少年でしょう? サイズの余裕は全身にありましたし、ピッチリしている訳じゃないのですから男性用でも女性用でも結局同じですわ』
「え、エレン……」
確かに全身的に余裕があってダボッとしているから、どっちでも構わないのはわかるが……女
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