鴉
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ミッドチルダ北部沖、アレクトロ社所有地の孤島。氷に包まれた海の底を俺は、ラジエル艦載機から発射され、目的地周辺で停止した魚雷から脱け出して泳いでいた。流石は極寒の海、水の冷気が伝わらなくても感触や空気で体温が奪われていく錯覚を抱く。
それはともかく、そろそろ施設最下層……物資搬入口に到着する。揺らぐ水面の向こうに、電灯の白い光が見えてきた。俺は波音を立てないようにこの空間の隅の方で上陸、周りに誰もいない事を確認してから周波数140.85へ無線を送る。
「こちらサバタ……エレン、聞こえるか?」
『良好ですよ、サバタ。予定通りに到着したみたいですね、状況はどうかしら?』
「やはり、地上へのルートは中央の昇降機しかないらしい」
『そう……予定通り、昇降機を使って地上へ出るしかないみたいですわね。ところでそこで働いている人達には、どんな方がいらっしゃいますか?』
「そうだな……デバイスで武装した社員が3〜4人と少数なのに対し、さっきから重そうな物資を運んでいる非武装の労働者が多数いる。従属しているにしては、重労働をしている奴らの表情や様子が妙だ。まるで強制的に働かされているような……何か思い当たる事は無いか?」
『恐らくは……サバタ、管理外世界の人間が魔法を知らないのはご存知、というより当然ですよね? しかし時折管理外世界で時空間の歪みやワームホール……いわゆる神隠しみたいな現象が発生して、他の次元世界に流れ着く事が多々あります。例えば地球生まれのグレアム提督もかつてこのような現象に巻き込まれてミッドチルダに流れ着き、魔法の才能があった彼は管理局に従属するようになりました』
「なるほど……では魔法の才能が無い管理外世界の人間が、もしこちら側に流れ着いていたらどうなる?」
『元々住んでいた世界に帰すのが本来の手続きなのですが……ここ最近、流れ着いた管理外世界の人間を元の世界に帰した経歴が、ある時期を境にぷっつりと無くなっているのです』
「ある時期?」
『ええ。推測ですが、“SEED”を開発し始めた時期だと思われます』
「つまりアレクトロ社は流れ着いた管理外世界の魔力を持たない人間を、この劣悪な環境で内密に強制労働させている……そういう事か。とんだスキャンダルだな、これだけでも」
『そうですわね……ですが管理外世界の人間が極秘裏に全てここに搬送されているという事は、やはり管理局も噛んでいると見て間違いないでしょう。しかしこれを発表しても決め手には欠けます。裁判の手札には使えますので、これも記録しておいてくださいクロノ君』
『わ、わかった……。だ、だが……管理局がこんな悪事に手を貸していたなんて……』
『クロノ君。この光景を信じられないと思う気持ちはわかりますが、これが現実です。あなた達
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