四十九話:Good bye my world
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と思いたくて叫び声を上げる。だが、現実は残酷だった。時歪の因子化が遂にユリウスの体から白い部分を全て奪い取ってしまう。ルルがその様子に不安げに寄り添ってくるがユリウスにはもう、愛猫を撫でる力も残っていない。
『はは……もう、お前とルルの顔も見えない』
『兄さん……兄さん……っ!』
『ルドガー……これで最後だ』
もう、何も見えない目でユリウスはルドガーを見つめて微笑みかける。
『最後までお前の兄貴で居られて……俺は本当に嬉しかった』
そう言い残してユリウスは黒い靄となって消え去る。ルドガーは空になった腕の中を茫然と見つめる事しか出来ない。そして住人が一人いなくなった部屋にはルルの悲しそうな鳴き声が部屋に響き渡る。そんな様子に黒歌達はヴィクトルを思い出す。彼には本物になると言う目標があった。エルがいた。だから生きることが出来た。なら―――空っぽになったルドガーはどうする?
『……兄さんのいない世界なんて……俺の―――本当の世界じゃないっ!!』
そう叫んだルドガーは銃を取り出して、自分の頭に突き付ける。そんな行動に黒歌は驚きを感じることはなかった。何となくそうするのだろうなと直感的に分かっていたのだ。自分に対してあれだけ執着して守ろうとしてくれたのだ。もし、自分が死んだ場合もそうなるのではと思っていた。だが、実際にそんな光景など見たくはない。彼女は目を逸らしたかったがここまで来て目を逸らすわけにはいかないと我慢して見る。
『さよなら、俺の世界』
乾いた銃声がマンションの一室に響き渡る。そして吹き出す血が部屋を赤く染め上げる。この部屋に残ったのは床に落ちた、トマトソースパスタと冷たくなったこの部屋の主、そして飼い主を失った一匹の白い猫の悲しげな鳴き声だけだった。
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