四十九話:Good bye my world
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弟にユリウスはそう呼びかける。そんな兄に対して弟は泣きそうになりながらも微笑みかける。
『例え残り少ない時間でも、1分1秒でも兄弟として一緒にいたい。そのためなら俺は、どんなことでもするよ。料理だって好きなだけつくってやるし、世界も絆も、いくらだって壊してみせる。だから……安心してくれ、兄さん』
『……ああ、だが、これも、俺の望んだ世界……か』
その言葉にユリウスは穏やかな笑みを浮かべて、ルドガーに自分の体を預けて目を閉じる。ルドガーはそんなユリウスを涙声になりながらも強く抱きしめる。そんなルドガーに対してユリウスも弱々しく抱きしめ返す。その力の無さが彼に与えられた残り時間の少なさを物語っていた。そして兄弟は立ち上がり、じっと見つめていた飼い猫と共に自分達の家へと帰っていった。
家に辿り着いた兄弟はユリウスが最近食べていなかったので食べたいと言うルドガーの手料理が出来るのを待っていた。ルドガーが作っている間にユリウスはルルにロイヤル猫缶を与えていたがそれをルドガーは咎めない。もう、残り時間が少ないことを分かっていたから好きにさせてあげたかったのだ。
『兄さん、トマトソースパスタができたよ』
『ああ……懐かしいな。もう、随分と食べてなかった』
ユリウスはしみじみと呟きながらルルから離れてルドガーに助けられながらなんとか椅子に座る。そして時歪の因子化の進んでいない右手でフォークを持ち、パスタを絡ませ口に運ぼうとするが―――
『ぐうううっ!?』
右手に強烈な痛みを感じてフォークを取り落してしまう。そしてよく見てみるとその手は時歪の因子化で黒く染まって来ていたのだ。そんな様子にヴァーリは彼の死期がすぐそこまで迫ってきていることを感じ取り、どうしようもない絶望感を感じてしまう。
『ほら、兄さん。俺が食べさせてやるから。兄さんは何もしなくていいから……』
『……ああ、すまないな。ルド―――うあああっ!?』
全身に焼けるような痛みが広がりユリウスはのたうち回り、トマトソースパスタの入った皿を叩き落としてしまう。そして、止めとばかりにその顔に時歪の因子化が広がっていき、右目を赤黒く染め上げ、彼から視力の半分を奪い去る。そんなユリウスをルドガーは消えてしまわないように強く、強く、抱きしめる。
『大丈夫だよ、兄さん。すぐに……また……作るからさ』
『……いいんだ、ルドガー。俺にはもう、時間がない。全てを捨ててまで守ってくれて……俺は嬉しかったよ』
『そんなこと言うなよ! まだ…まだ……一緒に居られるだろ!』
もう時間がないと言う、ユリウスにルドガーが嘘だ
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