四十九話:Good bye my world
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そして、リドウが、命がかかっていると言っていたことを思い出し、リドウが橋に変えられたのだと確信し、嫌いな奴ではあるが同情の念を抱く。そしてルドガーが走って行く先に遂に求めていた兄の姿が見えて来る。ただし―――
『全てが終わったら、ルドガーに伝えてくれ―――勝手な兄貴で悪かった……と』
今まさに自分の命を絶つために刃を首筋に当てている状態でだが。
『うああああっ!』
『ルドガー……!?』
悲鳴を上げながらルドガーはユリウスの腕に抱き着き、その手を止めさせる。その姿にユリウスは驚きながら刃を下ろす。そして、ルドガーは黙って兄を殺そうとしていた仲間達に、混じりけ一つない純粋な殺意の籠った目を向ける。しかし、ミラから他ならぬユリウスに頼まれていたというのを聞くとその殺意を消す。今まさに死のうとしている人間から頼まれたら断れるわけがない。
『なんでこんな悪趣味な方法なんだっ!』
怒り、悲しみ、憎しみ、全てが籠ったような怒鳴り声を上げるルドガー。そんな姿にリアスも本当にどうしてこんな方法しかないのかと、こんな残酷な方法にした人物を恨む。しかし、いくら恨んだところで現実が変わるわけではない。
『さて……これも人間の本質を問う手段なんだろう』
『すまない。こんなことをせずとも、人と精霊は信じあえるはずなのだが』
『はは……素直にありがたいよ、マクスウェル。だが、オリジンの考えは違うようだ』
ルドガーの叫びにも穏やかな声でそう返すユリウス。それに対してミラがマクスウェルとしてもこんな事は間違っていると思い、ユリウスに謝る。だが、ユリウスはそれに本心からのお礼を言うだけで皮肉の一つも言わない。そんな優し過ぎるユリウスを殺さなければならないルドガーは苦痛で顔を歪めさせる。ユリウスはそんなルドガーに笑いかけて言葉を続ける。
『……そんなに悩む必要はないさ』
そう言ってユリウスは左手に付けていた黒い手袋をとる。そして、その下にあった時歪の因子化で手袋以上に黒く染まった手に全員が息をのむ。ルドガーはその手を見て悟る。ここまでユリウスの時歪の因子化が進んだ理由は全て―――自分を守ってきたためだ。
文字通りその身を削ってユリウスはルドガーを守り続けてきたのだ。その事に黒歌は自分が妹に為にやってきたことなどユリウスがルドガーの為にしてきたことに比べれば足元にも及ばないと痛感する。
『どうせ、もうすぐ俺は死ぬ。だったら、この命を意味あることに使いたい』
左腕を胸に当てながら、自分の死を意味のあるものにしたいとユリウスが言う。
『俺の命を……お前の、カナンの地への道にしてくれ』
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