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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  〜無形物を統べるもの〜
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もできず眠り続けていた期間も決して短くはなく、その後もベッドでずっと生活している。何より排泄に困り“空間倉庫”を利用するということを思いつくまでの間我慢するのが辛かったなど不便だった思い出の多い場所だが、それでもどこか変な愛着が生まれてしまっているのだ。

「って、医務室に愛着がわいたらまずいだろ。」

一輝はそう言いながら苦笑し、ギフトカードを取り出す。そこにギフトの宿った私物を収納していき、それが済んでからは“空間倉庫”の中にただの物をしまっていく。
その作業の中で自分のギフトカードに旗印が刻まれているのを見て、少し笑みをこぼす。
箱庭に来た当時は、“名”も“旗印”もなかった、自分が居場所と決めたコミュニティ。今はそこに、“旗印”が戻ってきた。ジンや黒ウサギが個人的に一輝の病室を訪ねてきて、涙を流しながらお礼を言っていることを思い出した。

「・・・あんな、心から嬉しいと思えるお礼を言ってくれたんだ。まだここにいても、いいよな。」

そう言いながら一輝が次に見たのは、自分の手首につけられているブレスレット。シンプルな造りのそれには、ちょうど腕時計でいう時計部分が付いているところに“ノーネーム”の“旗印”が刻まれている。
先程一輝の部屋を訪ねてきた十六夜が、一輝に渡していったもの。せっかく旗印が戻ってきたんだから、何かつけようということになったようだ。

「飛鳥は指輪で、耀はチョーカー。黒ウサギはブレスレット・・・ジンがローブの背中にでっかく刺繍を入れてたあれは、かなり目立ちそうだ。」

一輝はちょっとした運動として十六夜と話した後本拠内を歩き回り、他のみんなのを見せてもらっていた。まだ全員分を準備することは出来ないから、とりあえず主力中の主力には配っておくことにしたんだとか。
どうしても、落ち着いてからでないと大量に発注することは出来ないのだ。
そして・・・

「十六夜は・・・つけてなかった、な。」

十六夜は、それを身につけていなかった。
渡されていないわけではない。十六夜ほどの実力を持つ人物に渡されないわけがない。だとすれば、他の理由でつけていないのだ。

「・・・何かあった、んだよな。」
「まあ、何かあったにはあったんだが、あれだけのことで心が折れてちゃ意味がないだろ。」

それでも原典候補者かよ、とぼやきながら医務室に入って来る人影。一輝はそれに対して驚きを見せることなく、ただ睨みつけた。

「なんだ、出てくるのか?まだ本調子じゃねえし、そのまま帰るなら見逃してやるつもりだったのに。」
「さすがに、やること終わってないのに帰るわけにもいかない。俺のことはとりあえず遊興屋(ストーリーテラー)とでも呼んでくれ。」

その人影は一切隠れようとも隠そうともせずに堂々と歩き、一輝のすぐ隣に立
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