4部分:第四章
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第四章
「これで。今は。やっと次に」
微笑んでいた。やがて世界は紅蓮の焔に包まれ彼の亡骸はその中に消えていく。その焔が消え去り世界に何もかもがなくなった時だった。
地上に新たな神々が姿を現わしていた。そして人間達も。彼等はその何もかもがなくなってしまった世界に立っていた。だがその顔には絶望はなかった。
「やるか」
「ああ」
微笑んで頷き合い土を耕し木を植え海を作っていく。そしてその中央に一本のトネリコの木が生えていた。そのトネリコにあの光がやって来た。
「起きていますか」
「うん」
トネリコは光に答えた。彼は起きていた。そして話すことができたのだった。
「起きているよ。最初からね」
「そうですか」
「僕の次の姿はこれだったんだ」
「そうです。先の世界樹は焼け落ちました」
ラグナロクの時にだ。世界を形作っていた世界樹ユグドラシルはその世界が滅び去る時に消え去っていたのだ。しかしまたトネリコが生えていたのである。世界の中心にまた。
「ですが今度は貴方が」
「僕が世界樹になったんだね」
「そうです。かつて世界を取り囲んでいた貴方が」
光は彼に優しく語る。
「今度は世界を司る樹になったのです」
「そうなんだ。今度は地上にいていいんだね」
「ええ。ずっと」
その優しい声が続く。
「貴方はここで。世界を見るのです」
「奇麗な世界だね」
まだ何もない。しかし神々や人々が新たなものを築いていくのを見て光に述べた。
「ここは。とても」
「これから様々なことが起こります」
光はこのことも彼に告げた。
「ですが同時にまた」
「その楽しいこともあるんだね」
「そうです」
彼が言うのはこのことだった。
「その通りです。貴女はその全てを見ることになります」
「世界樹としてだね」
「それでいいですか」
トネリコになったヨルムンガルドに対して問う。
「それで。やはり苦しいこともあるでしょうし冷たいこともあるでしょうが」
「それはもう慣れているからいいよ」
蛇だった時の達観はまだあった。しかし今の彼はそれをもう完全に受け入れていた。既に克服してしまったものとして。
「もうね。それは」
「左様ですか」
「けれどこれからは違うんだよね」
ここまで話したうえでまた光に尋ねてきた。
「僕は。楽しみだって見ることができるんだね」
「はい、美しいものも」
「だったらいいよ。それでね」
「では。これからは」
「ここにずっといさせてもらうよ」
周囲を見回しながら言う。この世とありとあらゆるものを見回している。この世の中央にいる為全てのものが見える。それを見ているのだ。
「これからはね」
「では。御願いします」
光は彼に頼んできた。
「この世を守る世界樹としての役目を」
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