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駄目親父としっかり娘の珍道中
第73話 愛車の手入れは自分でやろう
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 洋上は地獄絵図と化していた。高杉一派の所有する偽装船に向かい、桂一派の艦隊が一斉砲撃を見舞っていた。砲弾が海面に激突する度に高い水しぶきが上がる。幸い桂一派の艦隊は砲台の命中精度が低いせいか致命傷にはなっていないが、いずれにせよこのままではたった一隻の偽装船だけではそうそう長くは保たないであろう。
 桂一派と高杉一派。
 かつては同じ攘夷の名の元に集った者達であったが、今では桂一派は争いごとを嫌う穏健派となり主だった攘夷活動はしていなかった。
 だが、高杉一派は違う。彼らは、特にそれを率いている高杉晋介は違う。彼には思想も何もないのだ。
 ただこの江戸の町を壊す。それしかないのだ。
 その為にこの二つの派閥は大きく違った道を行ってしまい、その結果こうなってしまった。
 仮に岡田が桂を斬らなかったとしても、結果的にはいずれこうなっていたのかも知れない。が、全ては既に起こってしまったに過ぎない。最早後戻りのできない所まで来てしまったのだ。

「おいおい、どうすんだよこれぇ―――」

 飛び立った偽装船を目の前にして銀時は溜息をもらす。急ぎ足で向かったは良かったのだが、結局間に合わず飛び立った偽装船と数隻の武装船の激しい空中戦を地上で見上げる羽目になってしまった。

「すまない、急いだつもりだったんだが―――」
「参ったなぁ、近くにパトカーとかねぇか?」

 あちこち見回すが残念な事に既にこの港近辺は引き払われた後らしく、乗り物関連なのは何も残ってはいなかった。後残っているのと言えば銀時と鉄子が乗ってきた銀時所有の原付位だ。だが、原付では空を飛べる訳がない。このままでは飛べない侍は只の侍である。

「ちっ、こんな時にあのじじい何か仕込んでねぇのかよ? あのじじいのこったから【こんな事もあろうかと】って感じで何か仕込んでねぇのかよ」

 最後の希望として以前源外に修理させた原付を調べだす。どうせあの源外の事だから何かしら仕掛けでもしてるであろう。そんな淡い希望を胸にあちこち調査をしだした。

「何をしているんだ? 銀時」
「いやあれだよ。こう言う時アニメとか漫画とかでさぁ、何かしら最終手段とかその辺に転がってるもんなんだよ。ほら、俺ってこの小説の主人公じゃん。だからそう言った類の定理に当てはまるかなぁって思ってさぁ」
「そ、そう言う物なのか?」

 アニメの定理とか主人公の定理とか、はっきり言って鉄子には理解し難い事ばかりだったが、要するに銀時達が乗ってきたこの原付に何かしらの仕掛けが施されてる筈だと、そう言いたいのであろう。
 それだけは理解出来た。

「おっ、このボタンとかそれっぽくねぇ!?」

 今まで全然気づかなかったのだが、原付のすぐ下辺りに妙な存在感を醸し出す赤いボタンが其処にあった。もしかし
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