8-3話
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自然が周りを囲んで圧迫感が襲ってきた。
動かない深い森林は圧倒的なほど存在感を漂わし、土草の匂いと何かが潜んでいると思わせる茂みが私の気を散らす。
先が見えない未知の領域だけが八方に広がっていて、恐怖感が取り囲むように狭めてきてるようで動こうにも動けないでいる。
無理にでも自分からついてきたのだけれど、ジェニアリーさんに置いて行かれて、私はどうしようもなく心細くなっていた。
真理谷君達を見捨てるのか見捨てないのか、アキラ君の事も気にかけているような事を言ってジェニアリーさん一人で森の中へと駆け出して行ったのを見送る事しか出来なかった。
「どうしたらいいの……」
改めてとても不安になる。
怖さを紛らわしたくて何かしてないと落ち着かない衝動が湧いてくる。
しかし、狭めてくるような恐怖感が周りを取り囲んでいて、足から動けそうになかった。
周りは見渡す事も出来ないような深い樹林が広がっていて、それ以外にわかるのは正常を失った人達と真理谷君達がいる広場だけ。
周りの視界の届かない樹海も怖いけど、ジェニアリーさんが危惧する集団狂気を起こした人達に近づく事も怖いと感じていた。
人がいる所に行って安心したいという気持ちはあった。 しかし本当に…本当に、あの人達はそんなに怖い存在になっているのだろうか?
確かめてみたい…だけど、ここからでも窺える穏やかさなど欠片もない形相が揃い踏みしていると、ジェニアリーさんの言う事が本当なのだとわかってしまう。
「………(怖い…)」
どこにも行けない不安が掻き立てられる。
周りには未知の森、そしてそこに一人で側には誰かがいない事がとても怖い。
思えば、昨夜化け物に襲われてから…死ぬような目にあったというのに、今初めて一人になって恐怖というものが蘇ってきていた。
改めてジェニアリーさんが側にいたという事が、どれだけ自分を安定させていてくれたのかがわかる。
お茶をくれて、落ち着かせるように宥めてくれて、厳しく言うようで逞しく生き延びられるように諭してくれた人…それが今私一人になって、どれだけありがたいかがわかった。
その場で蹲ってしまいそうな時、スンスンと鼻を突っつくように匂いを嗅いでくる小さな存在の事を思い出した。
「ぁ………」
それはジェニアリーさんと別れる前に、ずっと私に付き添ってくれている小さな仔リス――プティロドゥスという名前だとは知らない――だ。
まるで気遣うように接してくるその小動物に、心の
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