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戦国異伝
第二百一話 酒と茶その十一

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「織田のものとなります」
「そろそろ動かねば」
「危ういかと」
「天下が定まってからでは遅いです」
「このまま動かずにいると」
「もう遅いかと」
 こう言うのだった、しかし。
 松永はまだだ、彼等に言うのだった。
「いやいや、我等jは織田の陣中におるからな」
「だからですか」
「ここはまだですか」
「動かぬと」
「そう仰るのですか」
「動く時は動く」
 このことは確かだというのだ。
「だからな」
「落ち着けというのですな」
「そういうことだけじゃ」
 松永だけは飄々としていた。
「だからな」
「ううむ、それでは」
「まだ何もしませぬか」
「動かずに」
「織田家の中に留まりますか」
「そうなる、落ち着くことじゃ」
 松永だけはこう言う、そしてだった。
「焦ることはない」
「そう仰り数年ですが」
「織田家に入り数年ですが」
「まだ動かず」
「そうして」
「そうなる、ではな」
 こう言いだ、松永はまだ飄々としてだった。眉を顰めさせている家臣達に対してこう言ったのであった。
「夜も遅い」
「寝ると」
「そう仰るのですか」
「今宵は」
「そして小田原に」
「そうじゃ、寝るぞ」
 平然と笑っての言葉だった。
「よいな」
「ううむ、そうですか」
「では、ですか」
「今宵は寝ますか」
「そうしますか」
「寝てこそじゃ」
 人はというのだ。
「ですから」
「それはそうですな」
「では今宵はです」
「このまま寝ます」
「我等も」
「ゆっくりと寝るのじゃ」
 松永は不機嫌なままの家臣達にこうも告げた。
「わしもそうするしのう」
「はい、しかしです」
「頼みますぞ、殿」
「殿も十二家の一つの主ですから」
「我等の棟梁のお一人なのですから」
「それもわかっておるからな」
 こう応えてだ、そうしてだった。
 松永も彼の家臣達も寝た、そしてだった。
 休息を終えた信長は意気高々とだ、全軍に告げた。
「ではこれよりじゃ」
「はい、相模に向けて」
「進軍ですな」
「目指すは小田原じゃ」
 北条家の本拠地であるこの城だというのだ。
「あの城を陥としてな」
「そして関東をですな」
「関東を手中に収められますな」
「そうじゃ、関東を抑えてじゃ」
 そして、というのだ。
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