第三章
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ミンはその中で中学高校と進学し成長していったが店の手伝いは続けていた。そして高校を卒業しても。
ゴーの店を手伝っていた、ゴーは遂に九十五を超えたがだ。
まだ店をやっていた、そのうえでだった。
すっかり成長して背も大きくなり奇麗になった曾孫娘にだ、笑顔で言った。
「奇麗になったのう」
「そう言ってくれるの」
「うむ、それにな」
「それに?」
「いや、しかもな」
それに加えてというのだ。
「服も変わったな」
「ああ、この服ね」
ミンもここで自分の服を見る、その服は。
中学生の時はシャツにジーンズだった、しかし高校を卒業した今は。
「アオザイね」
「それじゃ」
上下共に汚れが目立たない黒だ、屋台で働くことを考えて。
詰襟の上着は長くスリットは深い。幅の広いクワンというズボンも印象的だ。
そのアオザイ姿の曾孫を見てだ、ゴーはその皺だらけの顔を綻ばせた。
「御前にも絶対にいい人が来てくれるな」
「あら、そうかしら」
「その気立てでその器量だからな」
「だからなの」
「絶対にいい人が来る」
こう曾孫に言うのだった。
「その時まで頑張って生きるか」
「百歳以上まで」
「ははは、最初からそのつもりじゃ」
「百歳以上生きて私が結婚するの見て」
「それで大往生かのう」
こう笑って言うのだった。
「そうしようか」
「それがいいわね」
「そうじゃな、ここまできたらな」
「じゃあ私はね」
ミンはも笑ってゴーに言った。
「頑張って料理、特に屋台の麺の腕を磨いて」
「そしてじゃな」
「いい人見付けるわね」
「頑張るのじゃぞ」
「そうするわね」
こう曽祖父に約束するのだった、そしてこのやり取りから一年程してだ、そのアオザイ姿のミンに顔を赤くさせた青年が来て。
何時しかその青年も屋台を手伝う様になっていた、その二人を見てだ。
ゴーはぽつりとだ、こう呟いた。
「後は婆さんと一緒に百歳を超えるか」
「私達の子供は見ないの?」
「ははは、今度はそれか」
麺を茹でつつ笑うのだった、ホー=チ=ミンのその夕暮れの中で。
アオザイ 完
2015・3・28
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