第二章
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「私あまり」
「実感が湧かんか」
「そんなのとても」
ミンは首を傾げさせたまま答えた。
「まだまだね」
「そうじゃな、しかしな」
「それでもなの」
「今はそうした服でもな」
青いジーンズと白いシャツだ、ベトナムでもこうした服が普通になってきている。かつての敵国アメリカの服装も。
「それが変わる」
「そうなの」
「アオザイを着る様になるわ」
「アオザイねえ、嫌いじゃないけれど」
「あまり着ないな」
「うん、それでもなの」
「あれを着る様になる」
ミンもというのだ。
「そうなるわ」
「何でそう言えるの?」
「婆さんもそうじゃったし御前のお母さんもそうじゃったしな」
「だからなの」
「うむ、わしの娘と孫娘は全部そうじゃった」
息子がいてその後に娘が三人、そして孫は四人がそれぞれ二人ずつで八人だった。その八人のうち三人が女の子でそのうちの一人がミンの母親で彼と一緒に暮らしているのだ。
「だからな」
「そういえば従姉のお姉ちゃん達も」
「アオザイを着ておるな」
「だからじゃ」
それでだというのだ。
「御前もまた着るわ」
「アオザイをなの」
「アオザイは皆着るんじゃ」
ベトナムの女ならというのだ。
「そうした服じゃよ」
「友達でよく着る娘がいるけれど」
「そろそろ色気付いてきたのう」
「それでなの」
「御前もじゃ、まあ御前が結婚するまでは続けるわ」
笑ってまたこう言った。
「それまではな」
「百歳になっても?」
「はっはっは、百歳になっても屋台か」
「そうするつもり?」
「それも面白いな」
「本気でそう言うの」
「九十歳までやっておる、それならな」
百歳までもというのだ。
「そこまでやるのも悪くないわ」
「ううん、凄いわね」
「婆さんも長生きじゃしな」
「うちの家系長生きよね」
「そうじゃな、それも何よりじゃ」
ゴーは飄々と笑いつつだった、そのうえで。
曾孫娘と一緒に屋台を開く用意をしてだった、そのうえで。
二人で店をやった、ゴーはこうした曾孫娘との日常をその老いの中で楽しんでいた。
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