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雲は遠くて
76章 モリカワのお花見の会
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カワ・ミュージックに入れさせてもらっていて思いますけど、印税とかの面でも、
他者と比べても、よくしていただいてますよ。まったく、悪徳業者や、ブラック企業、
自分だけ良けれいいという不心得者ばかりのような世の中に、
心の洗濯をさせていただけるような、ホワイト企業ですよ、モリカワさんは!あっはは」

 そういって、美樹の彼氏の陽斗がわらった。

 ヨハン・ゼバスティアン・バッハの話で、意気投合して、話に熱くなっている、信也と陽斗であった。

「バッハの音楽は、キリスト教的でありながら、
キリスト教を越えた普遍性を持っていると、ぼくも思うんですよ。
だから、無信仰の人にでも、いまも感動を与えるんだと思うんです」

 生ビールでいい気分の、陽斗が信也にそう語った。

「そんなんですよね。はる(陽)ちゃん。バッハの音楽は、崇高さというか、
壮大なスケールの美しさと同時に、
人間らしさというか親しみやすさの、聖と俗とでもいうような、両面をもっていて、
芸術性としては、最高峰なんだと思いますよね。
それは、まるで、詩人で童話作家の宮沢賢治を思わせるような、感じもするんです。
賢治も、仏教の法華経(ほけきょう)を信仰していたようですからね」

「何かを信仰するかどうかは、ともかくとして、ぼくは、愛する力とでもいうのか、
そんな、愛ということを、大切にしていく考えが、必要な気がするんです。
ねえ、美樹ちゃん」

「うん、そうよね。はる(陽)くん。ニーチェも、こんなこと言っているわ。
『人を愛することを忘れる。そうすると次には、自分の中にも愛する価値があることすら、
忘れてしまい、自分すら愛さなくなる。こうして、人間であることを終わってしまう』とか、
『誰かを愛するようになる。すると、よい人間へと成長しようとするから、
まるで、神に似た完全性に近づくような人間へと成長していくこともできるのだ』とか・・・」

「おおお、さすが、ニーチェですね。いいことを言っているよね。美樹ちゃん。
ぼくは、最近、脳科学者の茂木健一郎さんの本を読みふけっていてね。
茂木さんは、『物質であるはずの脳が、なぜ、意識を持つのか?』
という不思議としか説明のしようのない難問を真面目に研究している人で、
そのことだけで、ぼくなんか、尊敬しているんだけど、その茂木さんは、
『意識の(もと)と言ってもいい、クオリア(質感)と呼ばれる神経細胞による脳内現象の、
起源が、もし解明されれば、アインシュタインの相対性理論以来の、
最大の科学革命になるだろう』って言っているんだよね。
あっはは。むずかしい話をして、ごめんね。
ぼくが言いたいことを、簡単にいえば、茂木さんは、『物質である脳が、意識を持つこと自体が、
不思議な奇跡である』っ
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