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裏切り
3部分:第三章
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第三章

「ですがこれからは」
「そう、違う。ラムバーの為に使う」
 そのことを誓う。これは本当の心からの言葉であり誓いだった。
「それでいいのだな、弟よ」
「はい、兄上」
 目の奥の光をそのままにヴリトラを兄と呼んだ。
「ですから是非あの女を幸せにして下さい」
「わかった。では弟よ」
 インドラを信頼しきって弟と呼び言うのだった。
「俺、ラムバーを妻にする。そしてその望みを全て適える」
「はい、そうして下さい」
 こうして彼は兄弟と親友と妻を得た。友情と愛情も。少なくとも彼はそう思っていた。幸福を得たと思っていた。それまで彼が知らなかった全てのものを。彼は幸福に包まれ自分がラムバーの為に建てた巨大で豪華な宮殿で彼女と楽しく暮らしだした。しかしそれが真のものなのかどうか彼は疑ったことはなかった。全ての憎しみも怒りも何もかもをなくしていたからだ。かわりに幸福を得たのだと信じきっていたのだ。
 そんな幸せに包まれたある日のこと。ラムバーと宮殿の奥の二人の部屋でそっと夫であるヴリトラに囁いた。穏やかな笑顔に艶を浮かべながら。
「御願いがあるのですが」
「何だ、妻よ」
 ヴリトラは幸福に満ちて満足しきった顔を妻に見せて問うた。
「一つ御願いがあるのですが」
「御願いか」
 ここでインドラの言葉を思い出した。彼女の願いは何でも適えるということを。その言葉を心の中で思い出したのである。
「そうです。宜しいでしょうか」
「言ってみるといい」
 彼はそれを妻に許した。笑顔のままで。
「何でも」
「わかりました。それではですね」
 彼女は艶を込めた笑みに媚態を交えながら言葉を続ける。その艶と媚態で彼の心を捉えていくのを忘れていない。次第に彼を捉えていたのだ。
「お酒を飲んで欲しいのです」
「お酒をか」
「はい」
 願い自体はどうということはないものであった。
「宜しいでしょうか」
「いい」
 彼はその怖い顔をにこやかに笑ってみせて応えた。その醜い顔を好いてくれた妻に対して。妻を心から愛しているのを感じながらの応えであった。
「そのお酒を」
「わかった。ではその酒を」
「はい、こちらです」
 ラムバーがさっと右手を艶然と上げるとそこに幾つもの巨大な瓶が出て来た。その瓶からは酒の濃厚な香りが漂っている。その香り、何よりもラムバーの微笑みと願いを適えるという弟であり親友でもあるインドラとの約束が彼の心を占める。そうして言うのだった。
「では飲もう」
「全て飲んで下さい」
 ラムバーはこうも囁いた。
「是非共」
「うん」
 ヴリトラはその言葉に頷くとすぐにその酒を飲みはじめた。巨大な身体を持つ彼は酒を次々と飲み干す。全て飲み干すとその瞬間に酔い潰れた。酒にも強い彼だったがその量の多さに負けたのであ
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