四十八話:約束の地、呪われた宿命
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『いや、お前はなすべき仕事をなしたということさ。我が一族の人間の悲願、カナンの地を出現させたのだ』
そう言ってビズリーはカナンの地を様々な思いの籠った眼で見つめる。それにつられてルドガーもカナンの地を見上げるが今の彼の頭の中はエルの事でいっぱいであった。そんな様子に黒歌はルドガーの心情を思いやる。
『ルドガー、私は、お前を誇りに思うよ』
そう言ってルドガーに手を差し出すビズリー。嘘ばかりで真実を語らないビズリーであったがこの言葉だけは本心から言ったのであろう誇らしさが漂っていた。しかし、ルドガーはその差し出された手を握り返そうとはしない。あくまでも彼にとって大事なことは世界でも一族の悲願でもなく、エルとの約束なのである。
『俺はエルを追いかける!』
『ふっ、ユリウスの奴が心配するわけだ』
すぐにエルを追いかけようとするルドガーにビズリーが少し、笑いながらそう言うがすぐに真剣な顔つきになり、追ってどうする気だと問いただす。そして、ルドガーがこれ以上骸殻を使えばエルが時歪の因子化することを再認識させる。その事にルドガーは足を止めて悩む様に俯く。
『心配するな。エルは配下の者に保護させる』
『ルドガー、こういう時は時間を置いた方がいいよ』
ルドガーはビズリーとレイアの言葉に納得してこの場は引き下がることにする。そしてミラがビズリーにカナンの地への入り方を聞くがビズリーは本社に着いてから説明すると言う。そのことに不満げな顔をするミラ達であったが、ビズリーはカナンの地は逃げないから慌てるなと言う。
『……逃がすものかよ』
そう呟くビズリーの目はやっと獲物を見つけることのできた餓えた獣のような獰猛さが宿っていた。そしてルドガー達はクランスピア社へと向かう。エルがビズリーに会うために再びこの場所に戻って来ることも知らずに。
ユリウスの心配をしながらクランスピア社についたルドガー、ジュード、そしてミラは早速社長室に向かおうとするがリドウによってジュードとミラはダメだと言われてしまう。しかし、そんなことをルドガーが承知するわけもなく何とかできないのかとヴェルに頼むと、驚きの言葉が返って来た。
『承知しました。ルドガー副社長のご判断なら、異存はありません』
『「はあっ!?」』
『「ルドガーがクランスピア社の副社長……!」』
余りの出来事にルドガーの叫びと黒歌達の叫びが重なり合い、ジュードとイッセーの声がまたしてもハモってしまう。ニートから高額負債者、そしてエージェントを経て大企業の副社長というサクセスストーリーにルドガー自身、驚きが隠せない。そんなルドガーが気に入らないのかリドウが舌打ち
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