2部分:第二章
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よ」
「はい、兄上」
「あの女は何というのだ?」
それをインドラに対して問うた。
「あの女の名前は。何と」
「ラムバーと申します」
「ラムバー」
「そう。アプサラスの一人でして」
水の精霊である。普通アプサラスはもっと清らかな色をしているのだが何故か彼女は漆黒である。しかしその漆黒の肌も髪も独特の光を放っており実に艶かしい。ヴリトラはその艶かしさにも心を奪われていたのだ。
「兄上に是非御会いしたいというのでここに呼んだのです」
「俺に」
これまたヴリトラには思いも寄らぬことであった。
「俺に。会いたい」
「そうです」
インドラはにこやかに笑って答えた。
「是非。貴方を夫にしたいと言っています」
「俺を。この俺を」
自分の醜い姿は知っている。だから妻なぞ持てないと思っていた。しかしその自分にあの様な美しい女が妻にして欲しいと言う。まるで夢の様な話であった。
「嘘ではないのか」
「いえ、嘘ではありません」
インドラはそれを否定した。
「あの者も是非貴方にと言っていますので」
「俺をか」
「兄上は妻を持っておられませんでしたね」
「いない」
彼は正直にその言葉に答えた。
「じゃあ。いいのか」
「はい、どうぞ。ですが」
しかしここでインドラは言葉を付け加えるのであった。
「一つだけ守って欲しいことがあります」
「守って欲しいこと」
「そうです。実はですね」
「何なのだ?」
インドラに対して問う。完全に彼を信用していて疑うことはない。しかしインドラの目はそんな彼を見ながら邪な光を放っていた。神に相応しくない光を。
「一つだけ。それはですね」
「それは。何なのだ」
「彼女の望みを全て適えることです」
「ラムバーのですか」
「それだけです」
そこまで言うと穏やかな笑みを浮かべてみせた。
「兄上があの女に誓われることはそれだけです」
「ラムバーの望みを全て適えるのだな」
「そうです。如何でしょうか」
「わかった」
彼はそれに迷うことなく頷くのだった。
「それならやる。俺のこの力は今まで憎しみの為にあった」
「そう、これまでは」
インドラの囁きはここでもヴリトラに対して向けられていた。
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