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裏切り
1部分:第一章
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のだった。
「私は勝つ。必ずな」
 そう言って出撃した。その手には彼を象徴する武器であるヴァジュラがあった。それでヴリトラを倒すつもりだった。彼は勝利を確信していた。しかし。
 何とそのインドラが敗れたのだ。ヴリトラの巨体と怪力には彼をもってしても勝利を掴むことはできなかった。彼は無様にその身体を横たえるだけであった。
「御前、弱い」
「何、私が弱いだと」
「そうだ」
 侮辱され怒りで顔を歪めながらその顔をあげてきたインドラに対して答える。
「御前神々の中で一番強かった筈。その御前が弱かった」
「まだ私を愚弄するというのか」
「弱いのは本当のことだ」
 彼はまた言う。
「呆気ない。俺御前を倒す為に作られた」
「私をだと・・・・・・」
「その御前が弱かった。俺もう怖いものない」
 こうまで言ってみせてきた。これはインドラにとってはこの上ない侮辱であった。だが敗れ地に伏すインドラにこれをどうこうすることはできなかった。彼は敗れたのだから。敗者に勝者をどうこうすることはできる筈もなかった。
 インドラの敗北を受けて神々はまた話し合いの場を持った。彼等は苦渋に満ちた顔で話し合う。その結果ヴリトラと和平することになった。
「それしかないか」
「そうだ。だが条件があるそうだ」
「条件だと」
 神々の一人が同僚の言葉に顔を上げた。そのうえで問う。
「そうだ。その条件はインドラが彼に謝ることだ」
「馬鹿な」
 神々はそれを聞いて驚きの声をあげた。彼等もインドラのことはよく知っている。何しろ同じ神々の一員だからだ。
「あのインドラが膝を屈するなぞ有り得ない」
「ヴリトラめ。何を考えて」
「だがインドラは敗れた」
 これは紛れもない事実であった。
「それではインドラもどうこうも言えまい」
「それはそうだが」
「だからだ」
 神々の一人はここでまたヴリトラの言葉を伝えるのであった。
「インドラが彼への憎しみを捨てて膝を屈するのなら」
「それでいいのか」
「それとインドラの土地の半分を欲しいという」
「土地もか」
「そうだ。そこまで渡してくれるのなら喜んで和平に応じようというのだ」
 そのことまでも彼等に伝えられた。
「これをインドラに話して受け入れてもらうか」
「それしかないか。しかも幸いなことに」
 インドラは敗れている。敗者は何も言えない。そうした事情もあった。様々な事柄があってインドラはヴリトラに膝を屈することになった。彼は屈辱にその身体を震わせながらもその話を受けた。受け入れるしかなかった。

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