第3話Aパート『あなたが守った街で』
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荷したという連絡が数日前にあった。
取り置きしてもらっていたそれを買って帰って、独り祝杯をあげようか。
寂しくなんかないもん。他の職員は仕事している、その時に呑める贅沢に比べれば。
◇ ◇ 1 ◇ ◇
アパートの入り口、やや古めかしい木戸をヒデオは押し開く。
ちょうど庭の落ち葉をほうきで掃き集めていた女性が二人に気付き。
大家だというその女性に、センタービルで入居手続きの際に渡された部屋の鍵と書類を示し、挨拶を交わした。
「ヒデオさんとウィル子さん、ですニャ。このアパートの大家のミッシェルといいますニャ。これからよろしくですニャー」
独特の語尾。普通であれば、ちょっと痛いキャラ付けにも思えるが。実は彼女には合っていた。
なにしろ、赤毛の頭には、ふたつのネコミミがぴょこりと突き出し。タイトめのスカートの間から伸びるふわふわ毛並みの尻尾。
いずれもぴこぴこ、くるりくねりと本人の意思で動かしているらしく、作り物では有り得ないから普通の人間ではない。何と呼ぶべきか分からないが、あなたの種族は?ともなかなか訊きにくい。
ひとまず、不確定名:猫耳大家。と、脳内で名付けておく。
上からエプロンを着けているが、ワイシャツとブレザーに腕章、タイトスカートの格好は、開会セレモニーで見た霧島レナという司会者と同じもので。訊くと聖魔杯のジャッジの制服だという。大会運営本部が用意した住居なのだから、そのアパートの大家が大会関係者というのも道理か。
「部屋はこっちですニャ」
竹ぼうきを玄関脇にたてかけて。部屋まで案内してくれるらしい。
二階建てで各階六つの部屋があるようだった。一階のもっとも手前が大家さんの部屋だという。
玄関脇には四畳半ほどの空間。ソファとテーブルに背の低い本棚、壁にはテレビもあり、共有スペースのようだが、今は誰の姿もない。
一階の奥まった部屋がヒデオの部屋で。
木製のドアを開くと、左手はキッチンスペースで、右にはユニットバス。正面の引き戸を開けば六畳間だった。
ウィル子が目に付く扉を端から開いていき、ほうほう。と何やら頷きながら覗き込んでいる。
家具はキッチンスペースに小さめの冷蔵庫と二口のガスコンロ、六畳間に四角い座卓。
流し台の下に、やかんと片手鍋がひとつずつ。フライパンや包丁といった調理用具は他に一切無いので買って来る必要があるだろう。
ユニットバスの裏、六畳間側から開くふすまの奥は二段の押し入れで、布団などの寝具一式が2組と座布団が4枚。これらは新品だという。
空の衣類ケースが押し入れの下段にあった。
「私の部屋の横の共有スペースのテレビ、電話。あと毎朝の新聞が設置されてますのニャ。入居者同士で譲り合って使ってくださいニャ。
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