エピローグ:神話と勇者と聖剣と
エピローグ/廻りゆく神話/プロローグ
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
清文が探している人物が、どこにいるのか知っているのだろう。彼は切羽詰まったような表情で、同じく焦っている安岐ナースに問う。
「すみません、琥珀、今どの辺りにいますか!?」
「分別室に向かいました! もうすぐ始ります、急いで!」
「うわ、マジか……ッ! ありがとうございます!!」
清文の走行速度はさらに上がる。彼とすれ違った老人の入れ歯がはずれ、通院していた男性のぎっくり腰が再発し、子ども達が泣き出した。
だがやっぱり、青年はそんなことを気にしない。むしろ速度を上げて走り始める。
瞬く間に変わっていく視界に、青年は三つの良く知る顔を見つけた。
一人目は、外巻の癖毛に、白いマフラーを巻いた青年。その隣に立つ二人目は、くせ毛気味の長い髪を一つ結びにした女性。そして最後の一人は、白い長髪を垂らした、黒いマフラーの少女。
「……ッ! 清文さん!」
白髪の少女……天宮刹那が、こちらに気が付いた。その声をきいて、うつむいていた青年……天宮陰斗と、女性……星龍そうも顔を上げる。
「刹那! 陰斗! そうさん!」
「清文……! まったく、キミって奴は……遅いよ、何やってたんだ?」
「ごめん、連絡が届いたのが遅かったんだ。圏外にずっといたみたいで……」
清文という青年は、彼の姉が所属する、VRゲーム開発チームに所属している。今回はそこに依頼をしてきた、別の開発チームのメンバーからの要請で、ずっと山奥の方に行っていたのだが……
「あー……くそっ、つまり菊岡の所為ってわけね。ほら、急げ!」
「ああ、悪い!」
三人に送り出されて、清文の速度はさらに上がる。
看護師たちが驚いて腰を抜かす。病室の入口に備え付けられた消毒液のボトルが軒並み倒れる。
そんな周囲をそもそも意に介すことすらない加速を続ける清文は、再び良く知る顔を見つけた。
一人は黒髪の青年だ。いつからか色が変わらなくなってしまった真鍮色の瞳で、向こうもこちらを見つける。彼が押す車椅子には、二人目……長い髪の毛をポニーテールにした女性が座っている。
三人目は銀色の髪をなびかせた、流麗な青年だった。
京崎秋也と、その妻京崎笑里。そして、清文たちの保護者役、七野宮観音。
「秋也、エミリー……それに観音さん!」
清文が彼らに…今度は常識レベルのスピードで…駆け寄るのと同時に、秋也が声を上げる。
「清文!! まだこんなところにいたのか!」
それは不甲斐ない親友を叱りつける、友情の怒声であった。清文もバツが悪そうに目を伏せる。
「ごめん! ……琥珀は!?」
しかしその名を問うことは忘れない。もちろん、彼らもそれに答えることを忘れない。
「すぐそこですよ」
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ