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ソードアート・オンライン〜神話と勇者と聖剣と〜
エピローグ:神話と勇者と聖剣と
エピローグ/廻りゆく神話/プロローグ
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清文が探している人物が、どこにいるのか知っているのだろう。彼は切羽詰まったような表情で、同じく焦っている安岐ナースに問う。

「すみません、琥珀、今どの辺りにいますか!?」
「分別室に向かいました! もうすぐ始ります、急いで!」
「うわ、マジか……ッ! ありがとうございます!!」

 清文の走行速度はさらに上がる。彼とすれ違った老人の入れ歯がはずれ、通院していた男性のぎっくり腰が再発し、子ども達が泣き出した。

 だがやっぱり、青年はそんなことを気にしない。むしろ速度を上げて走り始める。

 
 瞬く間に変わっていく視界に、青年は三つの良く知る顔を見つけた。

 一人目は、外巻の癖毛に、白いマフラーを巻いた青年。その隣に立つ二人目は、くせ毛気味の長い髪を一つ結びにした女性。そして最後の一人は、白い長髪を垂らした、黒いマフラーの少女。

「……ッ! 清文さん!」

 白髪の少女……天宮刹那が、こちらに気が付いた。その声をきいて、うつむいていた青年……天宮陰斗と、女性……星龍そうも顔を上げる。

「刹那! 陰斗! そうさん!」
「清文……! まったく、キミって奴は……遅いよ、何やってたんだ?」
「ごめん、連絡が届いたのが遅かったんだ。圏外にずっといたみたいで……」

 清文という青年は、彼の姉が所属する、VRゲーム開発チームに所属している。今回はそこに依頼をしてきた、別の開発チームのメンバーからの要請で、ずっと山奥の方に行っていたのだが……

「あー……くそっ、つまり菊岡の所為ってわけね。ほら、急げ!」
「ああ、悪い!」

 三人に送り出されて、清文の速度はさらに上がる。

 看護師たちが驚いて腰を抜かす。病室の入口に備え付けられた消毒液のボトルが軒並み倒れる。


 そんな周囲をそもそも意に介すことすらない加速を続ける清文は、再び良く知る顔を見つけた。

 一人は黒髪の青年だ。いつからか色が変わらなくなってしまった真鍮色の瞳で、向こうもこちらを見つける。彼が押す車椅子には、二人目……長い髪の毛をポニーテールにした女性が座っている。
 三人目は銀色の髪をなびかせた、流麗な青年だった。

 京崎秋也と、その妻京崎笑里。そして、清文たちの保護者役、七野宮観音。

「秋也、エミリー……それに観音さん!」

 清文が彼らに…今度は常識レベルのスピードで…駆け寄るのと同時に、秋也が声を上げる。

「清文!! まだこんなところにいたのか!」

 それは不甲斐ない親友を叱りつける、友情の怒声であった。清文もバツが悪そうに目を伏せる。

「ごめん! ……琥珀は!?」

 しかしその名を問うことは忘れない。もちろん、彼らもそれに答えることを忘れない。

「すぐそこですよ」

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