4部分:第四章
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また」
「そう、昼の世界も夜の世界も同じものなのです」
「そこにいる者もですね」
「おわかりになられたでしょうか」
「まだ信じられないのはありますが」
ヴィーラントはそれは素直に述べる。隠し立てはしなかった。
「頷くしかありませんね」
「まあ私もそうでした」
神父は笑ってそう述べた。
「ですからまたしても同じだとも言えますが」
「同じことを思うからこそ」
「はい、そうなります」
「ふうむ」
そこまで聞いてまた考え込む。
「ではこちらで行われることは私達の場所と同じだと」
「神に捧げる言葉は同じです」
「聖水も聖餅も」
「全く同じですよ。貴方の腰にあるものも」
「これもですか」
「はい、当然騎士様も領主様もおられますよ」
「あの城にですね」
「他の場所にも。皇帝陛下もまた」
「ほほう」
これはヴィーラントにとっては実に興味深い言葉であった。
「皇帝陛下もですか」
「ええ、勿論」
神父は答える。
「教皇は月、皇帝は太陽と申します」
「おっと、そこが違いますな」
ヴィーラントはそこを指摘してにこやかに笑う。
「こちらでは教皇は太陽、皇帝は月となっております。やはり夜の世界だから」
「そうなるのでしょうね」
これはインノケンティウス三世の言葉である。弱冠三十七歳で教皇となった彼は教皇権の絶頂期にあった。まさしく西欧の主でありその意のままにならぬ者はいなかった。その彼がこう言ったのである。当時ローマ=カトリック教会はそこまで絶対的な力を持っていたのである。その前にはどんな君主も太刀打ち出来なかったのだ。
「いやあ、それが面白い」
「そうですね」
神父もそれに相槌を打つ。
「我々とは違う世界があるだけでなくそうした違いもあるとは」
「ですが普通はないことです」
「こうして私達が交わることは」
「ええ。何分私達はそれぞれ違う世界にいます」
それが何よりも重要なことであった。
「ですから。私も長い間貴方達のことは知りませんでしたし」
「私もまた」
ヴィーラントはそれを聞いたうえで神父にまた問うた。
「朝になれば貴方達は休まれるのですね」
「はい」
神父はこくりと頷いた。
「左様です。姿を消します」
「そうなのですか。では」
「また村には誰もいなくなります」
「城にも」
「はい。昼の世界には私達はいませんので」
「そうなりますか、やはり」
ヴィーラントは徐々にそれが道理であるように思えてきた。これもまた不思議と言えば不思議であった。
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