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愚者の英断
愚者の英断
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「これからはずっと俺がアンタの傍にいてやります。何があってもアンタの背中は俺が護る」


「だから土方さん、アンタの隣を――アンタを俺に下せェ」


 最後まで言い終わる前に目の前で震え始めた土方を抱き締めた。少しだけ高い位置にあった頭が沖田の肩に埋まって隊服の肩口を濡らす。
「俺ァアンタの事が大嫌いだ。だけど世界中の誰より愛してる自信があります。今はまだ姉上の代わりでも構いません。でもいつかきっと沖田総悟として愛して下せェ」
 こんなの狡いですよね、すいやせん。沖田はそう言って辛そうに顔を歪めた。
 土方が初めて顔を上げる。その蒼い瞳にはうっすらと涙が膜を張っていた。
「馬鹿野郎ッ……代わりだなんて言うなッ……本当は自分を見て欲しい癖に……!」
「すいやせん」
「最初からちゃんと自分を見ろって言え……それこそ狡ィじゃねーか」
 沖田の背中に恐々と腕を回される。抱き締める力はあまりにも弱々しく、土方の身体は小さく震えていた。
 沖田は身体の奥底から悲しさと愛おしさが込み上げてきて訳が分からなくなった。とりあえず腕の中の温もりが消えてしまわないように強く強く抱き締めた。それ以外に、彼の悲しみを和らげる方法もこの想いを伝える方法も思い付かなかった。
「……お前はいなくなってくれるなよ、総悟」
「当然でィ。アンタを殺すまでは死んでも死にきれねぇや」
「お前さっき俺の背中護るとか言ってなかった? 背中からブッスリ逝かれそうで怖くて預けらんねーんだけど」
「大丈夫でさァ。……多分」
「多分って何だァァァ!」
 普段のやり取りに戻った頃には土方の涙は止まっていた。







愚者の英断







(大切なモノを失って大切なモノを手に入れた。精一杯幸せにするから空から見守っていて下さい)

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