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母の想い
4部分:第四章
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ったわよね」
 清音は笑って父に言った。
「そういえば」
「んっ!?ホワイトのことか?」
「そうよ。だからもう十二年ね」
「ああ、そうだな」
 思えば長い。そのことも思うのだった。
「十二年か。全然変わらないからわからなかったよ」
「大きくなっただけね。けれど昔から」
「賢くていい猫だよ」
「ええ」
 そのホワイトは今は清音の足元で丸くなっている。丸くなってゆっくりと寝ているのだ。
「おかげで全然寂しくなかったわ。ずっと」
「ずっとか」
「だって。家にいたら絶対にホワイトがいてくれているから」
 笑顔でこのことを父に語る。彼女が持っているコップにはオレンジジュースが入っている。それでお祝いをしているというわけだ。
「寂しいなんて思ったことなんて」
「そうか。それはよかった」
「あとね」
 ここで清音はさらに言うのだった。
「凄いことだってあったし」
「凄いこと?」
「実はね、三年前のことだけれど」
 その時のことを今父に対して話すのだった。
「私夜道で変な人につけられていたの」
「夜道!?じゃあ」
「ええ。学校の帰りにね」
 その途中というのだった。その時に狙われるという話は多い。清音に関してもそうだったということである。貞晴は娘の話をじっと聞いていた。
「つけられていて。もうすぐで追いつかれそうっていう時に」
「どうなったんだ?」
「急に猫がその変質者に襲い掛かって顔とかあちこち引っ掻いてね。それで」
「変質者は逃げたのか」
「ええ、そうだったのよ」
 こう父に語るのだった。
「それで助かったのよ。多分」
「こいつか」
「ええ、ホワイトだと思うわ」
 二人で丸くなったまま寝ているホワイトを見るのだった。ここでも彼女はただ寝ているだけだ。だがそれでも二人は温かい笑みで彼女を見ていた。
「確かには見ていなかったけれど」
「そんなことがあったのか」
「他にも。お父さんが出張の時とかね」
「ああ」
「ずっと側にいてくれてベッドでも一緒に寝てくれたし」
「そうか」
「まるでお母さんみたいだったわ」
 父の顔を見てまた告げたのだった。
「だからね。ホワイトはひょっとして」
「実はな」
 ここで父はあらたまって娘に述べた。
「ずっと。不思議に思ったいたんだ」
「不思議に?」
「そうだ。お母さんが死んで三年後だったな」
「ええ」
 父のそのあらたまった言葉に頷く。

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