否定に傾く二人の
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いう存在はこの世界では有り得ない存在である、と。
飛将軍はまだいい。積み上げられた歴史上に、そういった飛び抜けた武を持つ存在はまま居たのだ。悉くが女であるのが郭図の苛立ちの原因であるが。
曹孟徳も分かる。時代を飛び越えたような思考能力を持つ天才児は、世界をいつも変えてきたのだから。
だが、徐公明だけは余りに異端過ぎた。
武力も、知識も……袁家ですら生い立ちを確認出来ず、忽然と表舞台に出てきた事実も。
「まあそう言うな。俺はお前のいう通り化け物だが……袁家のもう一人の天才策略家と話くらいしたいのさ」
「へぇ……呆気なく認めるんだな」
「どっちを?」
「おべっかって分かってんだよバァカ。てめぇの存在の方に決まってんだろうが」
これだから頭の悪い奴は……と吐き捨てる。
このやり取りだけで、秋斗の頭の回転が夕や自分に及ばない事は見て取れたのだ。
「“普通の化け物”はなぁ……呂布みたいに人間になりたがるんだよ。自覚しながら距離を置いてるてめぇは成長過程で自分の異常さに気付いたんじゃなくて、初めから知ってやがったから言い伝えや迷信の……いや……信じてなかったが……マジもんかよ」
脅威だと感じていたからこそ調べ上げた。
最大限の警戒をしていたからこそ読み解き続けた。
だから郭図は……彼の存在そのモノに辿り着いた。
ああ、そういうことか……と自分の失態に気付いた秋斗は呆れのため息を一つ。
「頭いいな、お前は」
「そういうてめぇは頭悪いな。死ね」
「生憎まだ死ぬ気は無いんでね。目的が達成されない限り死ねないなぁ」
「クソが……」
誰に構うことなく、郭図は唾を吐き捨てる。
「で? 男ながら世界に選ばれた事でも自慢しに来たのかよ……“天の御使い”」
ただの予想。しかしながら火の無い所に噂は立たない。故に郭図は、大陸で唯一の、自分に劣る普通の男でありながら異端の存在な彼をそう評した。
――そうじゃなきゃてめぇなんぞは上に上がれないはずだ、徐公明。
教主が啓示を得るというのはイロイロな宗教で囁かれる噂話。それと似たように、秋斗は天からなんらかの啓示を得て異端知識を入手し、異常な武力を持てたのだろうと郭図は思う。
その上、武力を抜いたとして、能力的には郭図は自分が上だと分かっている。完全な未来予測が出来るのなら、徐州で追い詰められはしないし、この戦で夕を救えぬはずも無い。
自分が武力を天から授かったなら、きっとそう呼ばれていたはずだとも思うのだ。
郭図なら、人身御供のようなその呼び名で呼ばれることなど絶対に選ばない。誰かの為に戦うなど吐き気がする程嫌で、自分の為にしかその力は使わない。
――俺なら……もっとうまくこの乱世を掻き乱せたのによ。
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