第一章
猫語で会話とはこれ如何に
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「にゃあ」
「み」
「にゃにゃ、にゃあ!」
「みーご」
「にゃあにゃあ」
「みごっ」
「……なあ。あれって何話してんだ」
「さあ……会話成り立ってんのかね」
「動作が伴ってるから成り立ってんじゃね?」
「あの二人だからでしょう。俺達には無理無理」
真選組屯所は朝から異様な空気に包まれていた。原因は一匹の黒猫と、その相手をしている一番隊隊長の沖田総悟だ。
猫語で会話する二人を他の隊士達が見守るという、一見すると平和そうな光景。
しかし、問題はその黒猫だった。
瞳孔開き気味の蒼い瞳に真っ黒で良質な毛並み。筋肉質で優れた体格ながらにしなやかで丸い猫らしいフォルム、瞳孔が開いている以外は美猫と評するに相応しい顔立ち。
何を隠そうこの黒猫、真選組鬼の副長土方十四郎が討ち入りの際にばら撒かれた天人の薬を吸い込んだ事で変化した姿なのだ。
局長室。
近藤と山崎が書類と睨めっこしながら向き合って座る。近藤の隣には猫になった土方を(無理矢理)膝に乗せた沖田もいた。
「じゃあ、トシは元に戻れるんだな? 山崎」
「はい。変わった方法ですから時間はかかるでしょうが、この方法を実行すれば確実に元に戻ります」
それを聞くと近藤の表情はパッと明るくなった。
「そうか。手間をかけたな。いつもありがとな、ジミー」
「何でそこでジミー?! 今までのシリアスな雰囲気どこに行ったんですか!」
「元に戻れるならそれでいいじゃねーか。な、トシ!」
「みご……」
近藤が土方の背中をわしゃわしゃと豪快に撫でる。毛並みを乱されあからさまに嫌そうな顔をする土方。
「元に戻るには愛情が必要なんだろ。元々トシは好かれてるからな、みんなで愛情を注げばあっという間だ!」
「そうですかねィ。土方さんは無愛想ですぜ」
「そんな所も愛嬌だろう。今のトシは猫なんだから可愛いもんさ」
土方の爪が近藤の手を引っ掻く。
「いだだだ! トシィィィ?!」
「シャアアアア!」
「俺は人間だし可愛くねェ! ですって。状況分かってんだか分かってないんだか」
「隊長、良く分かりますね。ていうか局長相手にも結構容赦ないですね猫副ちょ……ギャアアア!!」
「フシャアアア!!」
「あー……猫駅長みたいに言うな、かねィ。面白ェ。いだっ、俺まで引っ掻きやがった土方コノヤロー」
「何で総悟だけそんなに傷少ないの?! 全くトシは総悟に甘いんだから!」
「アンタが言うか」
「え?」
局長室が一気に賑やかになった。
暫く皆でぎゃあぎゃあと騒いだ後、ふと近藤が表情を柔らかくして文句ありげに鳴いている土方の頭にポンと大きな掌を置いた。何事かと土方も鳴き止んで近藤を見上げる。
近藤はまっすぐに土方の目を見て優しく語りかける。
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