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母の想い
1部分:第一章
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 それでいいと思ったのだ。幼い娘心に。純粋だが確かな心で。
「私待つから」
「その間お父さんだけだけれどいいね」
「うん」
 母の遺影を見ながら答える。今は葬儀の途中だった。遺影から静かな微笑みを浮かべて娘を見詰めているのがわかる。花に囲まれたその中で。
「お母さんが戻って来るのなら。それでいいよ」
「そうか。それでいいんだな」
「だから。お父さん」
 今度は清音の方から貞晴に声をかけてきた。
「三年だけ待とうね」
「そうだな。たった三年だよ」
 子供にとって三年という月日がどれだけ長いのかはわかっている。しかしそれでもあえてこう言って娘を安心させたのだ。彼の親心である。
「それだけ待てばいいからね」
「うん」
 清音もまた素直に父の言葉に頷く。こうして二人は妻と、母とそれぞれ別れた。それから三年の間は何もなかった。しかしそれは三年経ったところで終わった。

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