Episode36:依存の先
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交面に少しは関係があるとはいえ、任官前の士官候補生同士の親善交流のようなものだ。つまり大学生の部活の一環のようなもの。エリカが騒ぎ立てる程重く考えるものというわけではない。
まあ勿論、部活の一環とはいえ、それに加えて許可を貰っているとはいえ、蔑ろにしていい理由にはならないのだが。
「……エリカ、あたしは一応、学校ではお前の先輩になるんだがな。『こんな女』呼ばわりされる覚えはないぞ?」
流石に黙っていられなくなったのだろう。口を挟んだ摩利を、しかしエリカは完全に無視した。
「そもそも兄上は、この女と関わり始めてから堕落しました。千葉流剣術免許皆伝の剣士ともあろう者が、剣技を磨くことも忘れて小手先の魔法に現を抜かして……」
「エリカ!」
恐らく、今の言葉は修次にとって禁句だったのだろう。これまでの気弱な態度から一変したその態度に、エリカは肩を震わせた。
その向こうで、やれやれとでも言わんばかりに肩を持ち上げてスバルが一歩後ずさった。このまま逃げるつもりだ。
「技を磨く為には常に新たな技術を取り入れ続ける必要がある。
僕が考えて、そうしたのだ。
摩利は関係ない。
今回のことも、摩利が怪我をしたと聞いて、僕がいてもたってもいはれなくなっただけだ。
摩利は来なくてもいいと言ってくれたんだぞ。
それでなくとも先刻からの礼を失する言動の数々、千葉の娘として恥を知るのはお前の方だ」
「………」
世界で十本の指に入る白兵戦の猛者。それに相応しい風格を、修次は纏っていた。願わくば兄妹喧嘩でそんな覇気を見たくはなかったが、まあ仕方ない。
思わず萎縮してしまいそうな気迫を見せる兄に、しかし妹は目をそらす事はしなかった。
「さあ、エリカ。摩利に謝るんだ」
「……お断りします」
「エリカ!」
「お断りします! 兄上が正式な任務を放棄してこの場におられることは紛れもない事実です! それがこの女の所為であることも!」
勢いを取り戻しかけたエリカに、そろそろ観衆の目が気になったのか、逃げるのを諦めたスバルが止めようとする。
「私の考えは変わりません! 次兄上は、この女とつき合い始めて堕落しました!」
しかしそれより早く、エリカが身を翻し、足早に兄の前を去っていった。
「全くエリカも素直じゃないなぁ……あ、俺は姉さんの所行ってくるから」
「分かった。じゃあまた後でな、隼人」
「うん。また後で」
達也たちは恐らくエリカを追いかけるだろう。そちらのケアは任せても大丈夫なはずだ。
だから、隼人の役目は今の一幕でフラストレーションを溜めた、姉のケアである。
「お久しぶりです、修次先輩」
「ああ、隼人君か。久しぶりだね…いやぁ、
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