Episode36:依存の先
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ずだ。にも関わらず、モニターが一瞬だけ捉えた一条の顔は、必死さでいっぱいだった。
(なにかに焦っている…? 三高になにかあったのかな)
普通ではない、なにか特別な理由。それは当事者でなければ分からないだろう。考えても無駄だと理解して、隼人は溜息をついた。
(…天幕もなんか騒がしいし、どっかに寝に行こうかな)
先の二高との試合で見事勝利を納めた一高は、晴れて決勝リーグへ駒を進めることとなった。
しかしトーナメントの開始は正午。三高の試合を観戦するにしても、まだ時間は余っている。少し仮眠をとるのもいいし、軽食を摂るのでもいい。
さてどうするかと考えながらホテルのロビーへ辿り着いた隼人は、少し先に司波兄妹と柴田美月の姿を見た。
「や、美月、達也、深雪さん。どうしたの?」
「ああ、隼人か。ちょっとな…」
と言いつつ視線を前へ向けた達也につられて隼人もそちらへ目をやる。
「げっ、姉さん…!」
そこには、口論をする兄妹を諦めたような白けた目で見ている九十九スバルの姿があった。
「九十九さんのお姉様、という事はあのスバルさんですか…確かに、有名人が沢山ですね」
「あれ、深雪さん知ってるの?」
「ええ。スバルさんは魔法師界隈で結構有名ですよ?」
それは、隼人にとって初耳もいいところだった。そもそも、スバルは何故か自分の情報を隠したがる。彼女が摩利の前の風紀委員長だということを知ったのも、隼人が入学してからしばらくして摩利に教えてもらったからだった。
(照れ隠しなのかなんなのか…姉さんは変な所があるんだよな)
なんて暢気な事を考えていると、どうやら兄妹ーーエリカとその兄である『千葉の麒麟児』千葉修次の喧嘩はヒートアップしていた。
「兄上、まさかとは思いますが、この女に会う為に、お務めを投げ出したのではないでしょうね?」
エリカに『この女』扱いを受けたのは、隼人と達也が属する第一高校風紀委員その長である渡辺摩利であった。
姉の愚痴らへんから、修次と摩利、そしてエリカの不仲を知っていた隼人は、大体の事情を把握した。
成る程、顔を合わせる度にこれ程の喧嘩をされては愚痴を零したくなるのも仕方がない。
「いや、だから投げ出したのでは……」
「そのようなことはお訊きしていませんっ」
それにしても、修次は兄としての威厳が足りないのではないだろうか。
今もエリカに言い訳を遮られてビクッとしていたし。
「全く、嘆かわしい……千葉の麒麟児ともあろう兄上が、こんな女の為にお務めを疎かにされるなんて…」
お務め、とはスバルが同行しているのを見るに、タイ王室魔法師団の剣術指南協力の事だろう。
それは確かに、日本とタイとの外
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