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魔法科高校の神童生
Episode36:依存の先
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「答えろッ!」

 響いたのは怒声と、背中が壁に叩きつけられる鈍い音。
 唐突に起こったこの事件に、三高天幕は静寂に包まれた。

「なぜ相手校の選手を過剰に攻撃した? 彼は既に動ける状態ではなかったはずだ!」

 声を張り上げているのは、珍しいことに一条だった。余程腹に据え兼ねているのだろう。犬歯を剥き出しにして、握り締めた拳は震えていた。
 対して、胸倉を掴まれて壁に叩きつけられたのは、冷たい目をした紫道聖一であった。

「答えろ紫道ッ!」

 珍しく怒気を発する一条の様子に、ジョージですら何も言えずに事の顛末を見守るしかなかった。

「まず、落ち着け、一条」

 対し、紫道に動揺している様子は見られない。将輝から発せられるプレッシャーを一身に受けても、怯むことはなかった。
 制服の胸倉を掴む将輝の手を振り解くと、紫道は大仰に溜息をついてみせた。

「お前…ッ!」

「将輝!」

 再び掴みかかろうとする将輝を、硬直から立ち直ったジョージがすんでのところで抑え込む。
 その将輝の様子に二度目の溜息を漏らし、紫道は口を開いた。

「敵だから」

「……何だと…?」

 曰く、敵だから攻撃したと。悪びれずに言い放った紫道に、将輝の激情の炎は冷水を浴びせられたように静まっていく。

「何度、も言わせる、な。奴らが、俺の敵だから、倒した。二度、と、起き上がれなく、なる程に、な。まあ、貴様に邪魔、されてしまった、が」

 静まった炎が、再び燃え上がる。しかしその炎は猛々しくなく、静かに、その勢いを増していく。

「九校戦は戦争ではない。痛めつける理由がどこにある」

「俺の敵、に回った時点、でそいつら、は俺にとって、邪魔な、存在。()()()()、存在、なのさ」

 ああ、ダメだ。
 もう既に、口論では結果など出そうにない。それ程までに、二人の認識にはズレが生じていた。否、紫道聖一という男の在り方が、歪過ぎた。

 紫道にとって自らに仇なす者は全て敵であり、殲滅する対象である。そこに、状況など関係ない。戦争だろうが、高校生の親善試合だろうが、紫道にとっては同じこと。
 ただ、敵には絶望を。彼の深層心理にまで植え付けられた呪いが、彼の在り方を歪に変えてしまっているのだ。

「九校戦で勝つには、このモノリス・コードを落とす訳にはいかない。けど紫道、お前を戦わせる訳にもいかない」

「だから、どうすると? 選手、の変更、は認められて、いないが?」

 彼が真に歪んでいるのだったら、彼を表に出してはならない。
 『一条』の名を持つ者として、これ以上の被害を出すわけにはいかない。

「ルアーが参戦するまでの五分……全ての試合を、その間に終わ
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