四十七話:かの人を刺し殺した日
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ドガー……エル、いっこわかったよ』
小さく囁くようにルドガーに話すエル。その姿は今まで元気な姿を見せて来たエルからは考えられない程、弱々しかったが、どこか新しい強さも感じさせた。エルは一つ成長することが出来たのだ。……大好きな人達との死別により。
『消えちゃうってことは、その人のスープが、もう食べられないってことなんだよね?』
ルドガーはエルの言葉に悲しげに俯く。そして子どもながらに死というものを理解したその言葉はリアスが今まで聞いてきたどの言葉よりも重かった。その事にリアスは耐え切れずに涙を流してしまう。
『ごめん……全部、俺のせいで……』
『ルドガーはエルを……守って……くれたんだよね? パパ……から……』
エルはルドガーを庇うように言葉を続けるが、途中で耐え切れなくなり父親そっくりの目から涙をあふれさせる。そして涙は頬を伝いスープの中へと滴り落ちる。それは次々とまるで雨のように降り注いでいく。エルはそのまま大声でしゃくりあげる。ルドガーはそんなエルを慰めてあげることも出来ずにただ、その泣き声を黙って聞いていた。
朝になりルドガー達は宿を出た。エルはルドガーの隣にいるが何も話すことなくただどこかを見つめていた。そんなエルをルルが気遣うように足に擦りついて泣き声を上げる。そんなエルにジュードが大丈夫かと聞くがエルは何も答えず頷くだけだった。そんなところにノヴァから借金の催促が来て、ルドガーにどんな時でも現実はついて回ることを教える。
『現実を考えれば、エルをこれ以上危険にさらすべきではないだろう』
『ローエン、エルが安全に過ごせる場所を確保してもらえないか?』
『それは、構いませんが……』
『エルが、ニセ者だから置いていくの!?』
エルが悲鳴のような声で叫んだ。自分が偽物として扱われていらない物として扱われるのではないかと恐怖して叫んだのだ。そんな様子にヴァーリは自分が親に虐待されて無い物のように扱われていた時の事を思い出す。
『そんなはずないだろ』
『そんなことある! パパが……そうだし。パパが一緒にいたかったのは……“本物”のエルなんでしょ?』
ルドガーの言葉にエルは目に涙を溜めて言った。ルドガーはそれに何も答えられなかった。ヴィクトルは何も本物のエルがよかったのではない。エルと一緒に暮らしたかっただけなのだ。だが、そんな思いはエルには伝わることもなく、こうしてエルを苦しめるだけのものとなってしまう。そんな想いのすれ違いに黒歌達はどうして人の想いはこんなにも伝わり辛いのかと苦しみを感じる。
『わかった。一緒に行こう』
そう決めたミラをエルは涙を溜めた目で見上げる。そうしてルドガー達はエルも連れ
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