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SAO−銀ノ月−
第椅子取話 参
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木に殺されるぞ!」

 ――そのエギルの声とともに、周囲の木々が意識を持ったかのように動きだす。木の枝がプレイヤーに鞭のように襲いかかり、まるで拘束するかのように両手両足を縛り上げていく。

「って……な、なんだよこれ!」

「くっ……」

 その不意打ちを避けられたのは、双大剣を振るう為に木々とは距離を離していたリクヤと、今の今まで木々を破壊していたエギルのみ。木の幹に寄りかかっていたシリカにマサキと、その木にまさしく乗っていたユカは抵抗むなしく拘束されてしまう。

「みんな!」

 その間にも木々はさらに解放されていき、大地から根を出すとその根を足として、周囲の木々が次々と自立していく。リクヤは不気味そうにその木を眺めながら、囚われた仲間たちを救うべく大剣を振るうと、まずは一番近くにいたシリカを捕縛していた枝を切り裂いた。

「大丈夫か! シリカ!」

「は、はい……」

 シリカの無事を確かめ次はマサキかユカか――と、リクヤが目標を定めようとした時、枝がユカを高く振り上げると、その樹洞に放り込んだ。

「ちょ――」

「ユカぁ!」

 そのまま樹洞へとユカは吸い込まれていく。虫に喰われたような小さな穴だった筈のそれは、まるでブラックホールのように計り知れない暗闇になっていた。

「ユカ……ユカ!」

「……シリカ! 俺をログアウトさせろ!」

 何が起きているかは不明だが――マサキに分かることは、次にユカのようになるのは自分だということ。ユカを吸い込んだ木はどこかへ逃げていき、リクヤは力任せにその行く手を阻む木々をなぎ倒していく。

「はい!」

 吸い込まれる前にログアウトする、というマサキの狙いが伝わった――自分でログアウトボタンを押そうにも拘束され、風刀スキル《瞬風》はまだ使用不能だ――シリカが短剣を構えるが、その前にマサキは木々に浚われてしまう。

「くっ……!」

「マサキさん!」

 ジェットコースターのような風圧がマサキに降りかかり、シリカの短剣の射程外へと吹き飛んだ。万事休す――何か策はないかと、頭を回転させているマサキの視界の端に、青い竜の姿が映る。

「ピナ!」

 ピナのバブルブレスがマサキを包み込み、リクヤの攻撃で減っていたHPは0となり、木に吸い込まれる前にこの仮想世界からの脱出を果たす。ただのゲームの余興ならばこのまま木に吸い込まれてもよかったが、突如動きだした木々に対して、マサキにはとてもそうは思えなかった。

 そう、まるで――

「くそっ、なんなんだよコイツらぁ!」

 ――木々を切り裂きながらリクヤは吼える。ただし返ってくる答えは、更なる敵性木々の増殖する音のみだった。

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