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映画
5部分:第五章
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話すのである。
「このことはね」
「はあ」
「とにかく。はじまったわ」
「映画がですか」
「そうよ。発表会から」
 それからである。もっともそれ以前、オファーを受けた時からはじまっているのだが。
「はじまってるのよ。もうね」
「じゃあ今私は」
「そう、もう映画に入ってるのよ」
 声が少し厳しくなった。
「だから。これからは」
「勉強勉強ですね」
「それに健康にも気をつけなさい」
「健康もですか」
「夕菜ちゃんはいつも健康だけれど」
 芸能界は体力がないとやっていけない。この辺りでも極めてシビアな世界である。
「それでも。今まで以上に」
「健康に気をつけてですか」
「あの監督の撮影は私もよく知らないけれど」
 ハンドルを握っているので実際にはそうしてはいないがそれでも心で腕を組んで話をするのだった。顔は考える顔になっている。
「それでも。一月で三時間の映画を撮るのよ」
「じゃあやっぱり」
「凄いハードな内容なのは間違いないわ」
 だからといってそれでもレギュラーを外さないのはこの辺りは彼女にとっては賭けの一面もあった。夕菜のその体力に賭けているのである。
「さてと、それじゃあね」
「はい」
「その体力をつける為に」
 マネージャーの顔が楽しげに微笑む。
「焼肉なんてどうかしら」
「焼肉ですか」
「そう、しかも羊」
「羊・・・・・・」
 実は彼女は肉の中で羊が一番好きなのだ。それも匂いがすると言われているマトンがである。味がいいだけではなく安くてしかもカロリーが少ないことが気に入っているのだ。
「羊ですか」
「食べ放題でね」
「うわっ、凄いですね」
「いい店見つけたのよ」
 マネージャーも話しながらさらにその笑みを深いものにさせている。
「デザートだって揃ってるし」
「デザートも」
「ただし。デザートは」
 デザートについてはマネージャーは言葉を挟んだ。
「一つだけにしてね」
「はい、わかりました」
「太り過ぎはね」
 この辺りも芸能界のシビアな話である。
「スタイルに関わるから」
「はい」
「最近じゃ太ってるグラビアアイドルもいるけれど」
 所謂樽ドルである。これはこれでいいのだが夕菜はそうしたスタイルではなくスレンダーなボディに大きな胸という吹石一恵の様なスタイルが売りなのでこれはまずいのである。

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