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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
断章 アカシャ年代記《Akashick-record》
??.----・error:『Nyarlathotep』Z
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いけない、正気で居たいのであれば。くぐもった下劣な太鼓の連打と、呪われたフルートのか細く単調な音色。躍り狂う不定形の神々の中で、ただ一柱のみ正気のまま嘲笑う新月を。
 認識してはいけない、安息に死にたいのであれば。奸佞邪智(かんねいじゃち)そのものを体現した、目に見えぬ月が、其処に在る事は。


「────巫山戯るな」


 その月に、悪態を。『右手』の親指を、真下に向けて。


「また、奪いに来る────諦めるのはお前だ、あの娘達を────」


 魂からの震えを、覚悟で抑え込んで。何処へとも知れぬ流浪の波、菫色の“芳香(スンガク)”に拐われながら。


『それは────愉しみだ。実に、実に』


 混沌は歓喜に満ちて、更なる嘲りを。矮小な虫けらの強がりを弄ぶ、子供じみた声で答えた…………


………………
…………
……


 ソファに寝そべっていた眼が開いて見詰めたのは、仄かに明るい朝日の射し込む木造の室内。耳が聞いたのは、壁に立つ大きな柱時計が朝五時を知らせる音色。
 状況掌握を開始する。場所、純喫茶『ダァク・ブラザァフッヅ』。時刻、午前五時ジャスト。状態────


 そこで身体を動かそうとして、気付く。足と腕──正確には後ろ手に組まされた親指──が、結束バンドで縛られている事に。
 恐らく、それを為した人物が。時計のベルなど気にせずに対面のソファで眠りこけている市媛と、アイマスクと耳栓を装着してテーブルに突っ伏して寝ているフレンダ。そして────


「超目が覚めたみたいですねェ。それじゃあ、尋問と超洒落こみますかァ」
「把握完了…………状態、()()()()


 その朝日を背にするように窓に寄りかかり、此方を炯々たる眼差しで睨み付ける最愛の姿だった。
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