第一部 学園都市篇
断章 アカシャ年代記《Akashick-record》
??.----・error:『Nyarlathotep』Z
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ごめんね。過去視はわたし、得意じゃないの」
「ムカシ? なんだ、そんな事。だったらワタシには簡単な話だよ」
申し訳無さそうにしょんぼり項垂れた陽光のような金髪の娘に対して、得意気にふんすと胸を反らした月影のような銀髪の娘。差し出されたその『右手』には────白く明滅する、乳白色の宝珠。
それを受け取り、見詰め……るような迂闊な真似はしない。どんな魔道具かも分からないものに迂闊に手を出す真似は、“妖蛆の秘密”で懲りた。
「これはね、過去を覗き見る事が出来る物なんだ。昔、これの贋作でワタシの身体を覗いていった男が居たくらいさ。悲鳴を上げて逃げていったけどね。失礼な話だよ」
「そ、そうか……」
「そうさ、勝手に覗いといて。本当に頭に来る」
そして何か癪な事を思い出したらしく、薄蒼色の星雲の瞳に不愉快を宿しながら腕を組んで唇を尖らせる。
空気が冷やされていくような感覚、その燐光はさながらダイヤモンドダストのようで。
「まあ、とにかく過去を覗き見るには十分な性能があるよ。けど、あんまり使ってると『ワタシ』に還ったり『猟犬』に見付かるからね」
「猟犬……」
思い出したのは、『幻想御手事件』で相対した化け物。時間の角度の螺旋を走る、悍ましき怪物……“ティンダロスの猟犬”を。
二度と出会いたくはない、あの異形。あれに再び見付かる危険性を孕む魔道具だと思うと、途端に悍ましく思えてきて。
「あ、そうだわ、こうじ! ヨグに聞いてみたら良いわ、あの子は全知だから」
「ヨグ……ああ、ヨグ=ショゴス?」
と、その時。うんうんと唸りながら考え事をしていた金髪の娘が、ぽん、と手を叩く。その『右手』には何時の間にやら、有機質な質感の────鈍い銀色の鍵が握られていた。
それを受け取り、握り締め……るような迂闊な真似は、やはりしない。どんな魔道具かも分からないものに迂闊に手を出す真似は、“輝く捩れ双角錐”で懲りた。
「うん、あの子とっても賢いのよ。だってあの子は、それだけで『この世総ての識』なんだから」
「そ、そうか……」
「ええ、そうなの。わたしの『無明の霧』から生まれたのよ?」
そして何か佳い事を思い出したらしく、薄紅色の星雲の瞳に歓びを宿しながら指を組んで微笑む。
空気が暖められていくような感覚、その燐光はさながら木洩れ日のようで。
「その鍵を使えば、あの子の本体の居るところに行けるわ。でも気を付けてね、近くの『わたし』に
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ