第一部 学園都市篇
断章 アカシャ年代記《Akashick-record》
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れと全く同じように、海鳥を見下ろすように嘲って。投げ渡した『何か』が一つ、闇に紛れながら海鳥の左手に収まって。返した踵で、女は中華風の建物の中に消えていく。
見送った海鳥は、一度盛大に舌を打って。受け取った『何か』をコートのポケットに仕舞うと、夜空に浮かぶ繊魄の月を眺めて視力の回復に努めながら。
「どいつもこいつも……ああ、ウザってェ!」
余りに情けない己の現状に癇癪のような叫びを放ち、根城に帰る為に再び歩き始めた。
………………
…………
……
水滴。無窮の虚空から霊質の一滴が、ポタリと。それに目を醒ました、天魔色の髪に蜂蜜酒の瞳を持つ少年が見たのは────海岸。
「此所は……」
金色の塵が舞う、菫色の霧。夜明けの青に煌めく銀燐。星の煌めきだと気付いたのは、僅かに遅れて。
明瞭となりゆく意識がまず認めたのは、白く香しいロトスの花。そして紅いカメロテが、星を鏤めたかのように咲き乱れた海岸だった。
「あぁ────やっと目を醒ましたのね」
「あぁ────ついに目を醒ましたんだ」
声が降る。煌めく花と星の砂の褥横たわる彼の、背後から。全く同じ声色、しかし正反対のイントネーションで。
目を向けた先、混沌が渦を巻く宇宙の天元。宇宙を満たす霊質の波が押し寄せる、『揺り籠』で。
四度目の邂逅、ならばもう驚く事もない。ゆっくりと体を起こし、そちらを見やれば────
「御早う、こうじ。お寝坊さん?」
「今晩は、コウジ。寝坊助さん?」
「今日は、二人共。早起きさん達?」
燐光を放つ黒金と白銀のドレスを各々に纏い、薄紅色と薄蒼色の星雲の瞳を各々に持つ『双子』が其処に。前回は眠りこけていた二人から同時にそんな事を言われてしまい、面映ゆい気持ちになりながら返事をすれば。
一人は嬉しそうに、一人は迷惑そうに。各々に、違う表情で。しかし同じように、歩み寄ってくる。
「変なの、わたしは一人よ? ところでどうしたの、こうじ? なんだか……悩んでるみたいだけど」
「変なの、ワタシは一人だよ。ところでどうしたの、コウジ? なんだか……悩んでるみたいだけど」
そして全く同時に、同じ事を口にして。やはり、隣に居るお互いの事には気付かずに。
温かな黒金の“開闢にして終焉”は不安そうに、冷たい白銀の“始源にして終末”は不審そうに。
「ああ……まぁ。昔の事で、少し……もう思い出せない事で」
「むかし? う〜ん、
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