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11部分:第十一章
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第十一章

「その娘だ、間違いない」
「おや、当たりだったかい」
「どうやらな。それではすぐにそこに行こう」
「学校の元の場所はわかってるみたいだね」
「一応は」
 その辺りも抜かりはなかった。
「ではこれで」
「何かよくわからないけれどその娘は兵隊さんにとって大切な人なんだね」
「否定はしない」
 そのことを隠しはしなかった。
「それでは。これで」
「しっかりしなよ」
 娼婦はにこりと笑って朝香に声をかけた。
「こんなご時世だから余計にね」
「戦争には負けたが心は負けてはいない」
 朝香は娼婦に背を向けたうえで言った。既に足はそちらに向いている。
「だから。行く」
「そうかい」
「何があっても」
 こうして彼女はその場所に向かうのだった。廃虚の、壊れてしまった鉄筋やコンクリートに満ちた道を歩きながら。そうしてそこに着くとそこは他のバラックと同じように木やブリキの破片を集めて作った粗末なバラックが幾つも建っていた。校舎は完全になくなりそのくすんだ黒や茶の建物があるだけになっていた。少なくともかつての姿は完全になくなり今の世相の姿そのままになっていた。
 軍人となっている朝香はそのバラック達の前に来た。するとそこに一人の初老の男がやって来た。
「どなたですか?と言いましたが」
 見れば彼はあのベテラン俳優であった。粗末な服を着ているが気品のある雰囲気を醸し出していた。姿勢もしっかりとしている。
「軍人さんですね」
「はい」
 朝香は敬礼をしたうえで彼に応えた。
「その通りです」
「こちらにはどのご用件で」
「人を探しています」
 彼は正直に初老の紳士に告げた。
「ある娘さんを」
「ここは今はこんな姿ですが」
 紳士は寂しい笑みになって後ろを振り向いた。
「それでも今も学校です」
「左様ですか」
「女学校です」
「それは知っています」
 朝香は毅然とした声で応えた。
「それもまた」
「左様ですか」
「そしてです」
 そのうえでさらに言葉を続けるのだった。
「秋月さんは」
「秋月さん?」
「色が白くておさげの」
 彼女の特徴も話す。真剣な顔で。
「その女の子ですが。ここにいると御聞きしたので」
「ああ、あの娘ならいますよ」
 紳士は頷きながら彼に答えてきた。
「この学校にね。今は」
「そうですか。いますか」
「暫く何処にいるのかわからなかったのですよ」
 紳士は話しながら困惑したものもその顔に見せていた。それがどうしてかは朝香にはわからなかった。だが彼の話はじっと聞いていた。
「何しろ激しい空襲でしたから」
「行方不明だったのですか」
「死んだとも思いました」
 この時代では普通にあることだ。何しろ戦争なのだから。戦争で人が死ぬのは当然のことだ。こ
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