第二百一話 酒と茶その二
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謙信は信長と正対した、そうして彼に言った。
「では貴殿に剣を授けます」
「そうするか」
「その剣を天下布武、そして天下泰平の為にお使い下さい」
「そしてさらにじゃ」
「政もですな」
「それもしてもらう、よいな」
「政は天下の柱です」
それそのものとだ、謙信もわかっていた。そのうえでの返事だ。
「それもわかっておられるならば」
「降ってから」
「天下泰平の政の末席に加えて頂きます」
「よし、わかった」
ここまで聞いてだ、確かな声で答えた信長だった。
「ではこれから頼むぞ」
「それでは」
「ではじゃ」
話が整い謙信は上杉家そのものと共に織田家に降り天下泰平の一翼を担うことになった、そのことが決まってからだった。
信長は家臣達にだ、こう言った。
「では宴の用意じゃ」
「これよりですな」
「宴ですな」
「そうじゃ、酒を用意せよ」
まず用意せよと言ったのはこれだった。
「そして馳走もじゃ」
「謙信殿をお招きして」
「そのうえで」
「いや、招かぬ」
それはないというのだ。
「既に織田家の者じゃからな」
「ではお招きではありませぬな」
「確かに」
「そういうことじゃ、ではな」
「はい、早速宴の用意にかかります」
「これより」
「茶も用意せよ」
こうも告げた信長だった。
「よいな」
「殿が飲まれる茶をですな」
「それもまた」
「わしはどうも酒は駄目じゃからな」
相変わらず酒は飲めない信長だった、これだけは飲めずそれで今もこう言うのだ。
「だからそれも用意せよ」
「さすれば」
こうしてだった、信長は宴の用意をさせた、それはすぐに整いだった。
信長は謙信と共に宴の場を持った、彼はそこで茶を飲んだが謙信は彼が茶を飲むのを見て微かに笑って言った。
「やはりですか」
「わしが茶を飲むことがか」
「はい、酒を飲まれぬと聞いていましたが」
「実際にな」
飲めぬとだ、信長自身も答える。
「わしは酒は一切駄目じゃ」
「だから茶ですな」
「若しくは水じゃ」
それも飲むというのだ、宴の時は。
「酒は殆ど飲めぬ」
「左様ですな」
「しかし御主は飲め」
無類の酒好きの謙信への言葉だ。
「好きなだけな」
「有り難きお言葉。そしてこの酒ですが」
「うむ、尾張の酒じゃ」
「尾張の酒ははじめて飲みましたが」
それでもとだ、謙信は信長に答えた。
「美味ですな」
「気に入ったか」
「越後の酒も尾張の酒もよいですな」
「どの国の酒でも飲むのじゃ。しかし御主はな」
謙信はというと。
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