第十一幕その二
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「お守りや破魔矢、それと絵馬を買ってお賽銭もして」
「色々して」
「そうしてだね」
「あと。出店があるね」
境内の中に一つありました、そこで売っているものは。
「たい焼きだね」
「あそこのたい焼き美味しいんですよ」
日笠さんが先生に笑顔でお話してくれました。
「神社に来る人はよく食べます」
「そうですか、それでは」
「お菓子ですから殺生にもなりませんし」
たい焼きでもです、形はお魚ですが。
「たい焼きとは違いますので」
「気兼ねなく食べられますね」
「はい、ですから」
「あそこでたい焼きを買って」
「召し上がりましょう」
こうお話してでした、そのうえで。
先生達はたい焼きのお店に行きました、そしてです。
皆でたい焼きを買いました、その時に。
お店のおじさんがです、先生達にこんなことを言いました。
「さっき面白い人が来たよ」
「面白い人とは」
「うん、最近時々来る人だけれど」
「どんな人ですか?」
先生は買ったたい焼きを早速食べながらおじさんに尋ねました。
「一体」
「インド人だね、あの服と顔立ちは」
おじさんは皆にたい焼きを渡しながらお話していきます。
「若い奇麗な人だね」
「その人がですか」
「うん、ここでたい焼きを買ったんだけれど」
その人が、というのです。
「物凄いね」
「物凄い、ですか」
「黒蜜をかけて食べていたね」
「たい焼きの上に黒蜜をですね」
「ここまで甘くして食べるってね」
「そうですか、相当な甘党の方ですね」
先生はおじさんとお話しながら察しました、その人こそとです。
けれどおじさんにそのことは言わずにです、普通に接して言うのでした。
「それはまた」
「うん、うちのたい焼きはそんなに甘くないかな」
「いえ、普通に甘く美味しいですよ」
先生は実際に食べながらおじさんに答えました。
「これは」
「私もそう思います」
日笠さんも美味しそうに食べています。
「前からこのたい焼きを食べていますが」
「ああ、お嬢ちゃん子供の頃からうちに来てるしね」
「もうお嬢ちゃんという年齢ではないですよ」
少し恥ずかしそうに笑って返す日笠さんでした。
「そろそろ結婚しないといけない年齢ですし」
「じゃあお姉さんかな」
「もうお姉さんという年齢でも」
「違うのかい?」
「そうです、お母さんになりたいですね」
先生を無意識のうちにちらりと見てから言った言葉です。
「私も」
「そっちも頑張りなよ、けれどだね」
「はい、このお店のたい焼きは美味しいです」
「昔からだね」
「適度な甘さ、それに生地もよくて」
「餡子も生地もたい焼きの命だからね」
「そうですよね」
日笠さんもそのたい焼きを食べながら頷きます。
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